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シャドーダンス  作者: 六青ゆーせー
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「この、糞ったれ壁張り屋めっ!」


アクトレスは叫び、バリアーを両手の爪で叩き続けた。


永田は右手を前に突き出し、左手で右手の手首を握る格好で、バリアーを維持し続ける。


バリアーが壊されるのは分かった上での作戦だ。

外側にバリアーを厚くし続けていけば、バリアーの維持に支障はない。


自分たちがバリアーの内にいる場合、内側に厚くすれば、微かではあるが、どんどん場所が狭くなり、酸素も欠乏してくるため、ずっと維持をし続けるのは無理があるが、敵を閉じこめるなら全く考慮は無い。


永田は、むしろ気楽にバリアーの維持を続けた。


何時間でも、女優さんの気が済むまで張り続けてやるさ。


永田はバリアーをどんどん厚くしていったが、アクトレスの爪が、バリアーだけではなく、下のコンクリートに微かな罅を作っているのは見落としていた。



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巨大で筋肉質なバタフライは、自分の上でマウントポジションを取っている少女の軽さに戸惑った。


格闘戦はいくらでも経験しているし、影繰りになる以前は軍に所属していたため一通りの肉弾戦は体得している。

バタフライは遅咲きの影繰りだったのだ。


餓鬼の頃はヤンキーだった。

毎日のように喧嘩もしたし、良治みたいなダチも沢山いた。


男は、米軍基地のある街で、米軍の軍曹を父として生まれたので、高校を中退することが決まった時、アメリカの父のところに行って兵隊になろうと思った。


ちょうど中東でドンパチやっていた頃だ。

ほどなく大男は殺し合いにも慣れ、軍隊の組織にも慣れた。

そこで影繰りと出会い、見込みがあるというので影繰りの修業を始めた。


そのまま行けばアメリカ人として、米国の影繰りになったかもしれないが、女手一つで自分を育ててくれた母親が病気になったのを契機に除隊して、日本に帰った。

影繰りの修業は独学で続け、やがておやっさんと出会って今の会社に入った。


餓鬼の頃から戦ってばかりだったから、マウントを取られたことは無数にある。

だが、さすがに自分の上に乗った奴が、こんなに軽かった経験はない。


五十キロも無いんだろうなぁ…。


バタフライは片手で持ち上げる重さだ。


腹に乗せて吹っ飛ばそうかと思ったが、これがなかなかテクニックはあり、素早く男にしがみつく。

一発、殴って飛ばそうかと思ったが、なぜか腕を横から押さえつけられたように動かせなくなった。


だが、少女が格闘に夢中なので、あの体に貼り付く蝶が飛んでこないのと、マウント状態で重なり合っているために、背後にいる餓鬼が落とせないことは幸いだ。


少女はポカポカ殴りつけてくるが、大男の纏うオーラは接近戦用の分厚いものだ。

こんなパンチ、一時間殴られ続けたとしても、顔も腫れやしない。


ただ、こっちの攻撃は、なぜか動けなくなってしまうため、状況が打開できない。

どっちにしろ、下手に少女を吹き飛ばそうものなら、すかざず餓鬼が落としにかかるだろうから、状況は変えずらかった。


しかし…。

もうすぐ変化は現れるはずだ。


そう…。


どんな人間も、何十分も連打を撃ち続けられはしない。


今も、少女の額には汗が光っているが、もうそろそろ、酸素欠乏になってくるだろう。

プロの格闘選手でも、実戦で五分間も殴り続ければフラフラになってしまうのだ。


それに…。


バタフライのドリルは、身体であれば、どこからでも出すことが出来る。

こんなに軽い少女ならば、餓鬼のところまで吹き飛ばすのは訳はない。


男は、心静かに、時を図っていた。

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