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誠は、壁から出した影の手で、自分自身の襟首を掴み、軽くジャンプすると同時に、影の手を強く引いた。
大男の手を逃れると、大男を目で追った。
大男は永田に突進している。
落とせれば一番いいのだが、男の動きは不特定に左右にぶれていて、蝶の飛翔のようでフラフラと予測しずらい。
只のスケートの左右対称な動きとは微妙に違う。
誠の能力を理解し、わざと予測しずらく動いているらしかった。
誠は、影の手を伸ばした。
何度かアクトレスの足を引っ掻けて、よろめかせている。
どうも、透過よりも素早く動く影能力のようだ。
地面から影の手を伸ばして、バタフライの足を掴んだ。
バタフライは盛大に転倒した。
線路の突起にぶつかり、線路上を転がって、反対側に落ちた。
そこに、蝶の鎧を纏い終えた美鳥が飛び掛かった。
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良治は驚いていた。
電柱ほどもある巨大なナイフを、開きかけた蕾に投げた。
ところが…。
蕾は、ナイフを弾き返した。
のみならず…。
ナイフは轟音を上げて、良治に襲い掛かって来たのだ。
横に飛び込むように転がって、なんとかナイフを避けた。
こりゃあ…。
影能力で、攻撃者に力を跳ね返している、ってことか?
が、考える間も与えずに、蕾から、分銅のようなものが飛び出してきた。
鎖鎌のように、分銅にはチェーンが付いていて、良治を狙って飛んでくる。
慌てて良治は走った。
そのまま線路の突起を乗り越えて、反対側に飛び込み、伏せた。
分銅がコンクリートにぶつかり、コンクリートを砕くのか、と予測したのだが、それどころではなかった。
爆発した。
紅蓮の炎が良治の背中を焼き、天井を焦がした。
マジの炎が出るのかよ!
もし伏せてなかったら、爆発したのはコンクリートではなく良治だった。
なんつー、ヤバイ影だ…。
良治が恐る恐る顔を上げると。
蕾がゆっくりと開くところだった。
奴らが出てくる!
だが、逆にチャンスかもしれなかった。
あの反射する蕾に隠れて、思うさま分銅を投げられたら、逃げる以外、手は無いが、出てくれば良治のナイフで反撃が出来る。
爆発する分銅が早いか、俺のナイフが早いか、勝負してやるぜ!
良治は立ち上がり、ナイフを浮かべた。




