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良治は、巨大なナイフを発射する寸前だった。
だが、すっかり動かなくなったので、死んだかなにかしたのだ、と思って忘れていた影の柱が、ゆっくり開こうとしていた。
やばい!
良治は、思った。
あの中には、小さな女と、細っこい男の二人の影繰りがいるはずだ。
どんな力を持っているのか、地下トンネルに入った時に鞘が閉じてしまったので判らないが、たぶんペアを組んで戦う連中だろう。
良治とバタフライの兄貴もそうだが、ペアという奴は、息がぴったりと合えば、とんでもない力を発揮する。
俺一人では太刀打ちできない。
良治は、考えることな苦手だったが、戦闘経験は積んでいた。
数の優位ぐらいは骨身に沁みて理解している。
この二人が動き出したら、きっと奥でバリアーに籠っている三人も動き出すだろう。
あいつらは接近戦では無類の強さを誇るアクトレスとバタフライ、名のある二人の影繰りを倒した連中だ。近づかれたら圧倒的に良治が不利だ。
逃げるしかないのか…。
奥の三人は絶対にブチ殺したかったが、ここまで不利な状況では撤退もやむないかもしれねぇ…。
そう。
後日、一人づつ仇を取ればいいのだ。
まさに良治が逃げ出しにかかろうとした時、バリアーの奥で、爆発が起こった。
「キャハッ!
坊やぁ…! あたしは復活したよ。
今日はツイてるねぇ!」
良治は唖然とした。
てっきり地の底に埋まっているかと思ったアクトレスが、どうやってか脱出した。
そして…。
アクトレスが巨大な爪を一閃すると、ゼイゼイ言いながら、何と兄貴が立ち上がったではないか!
ス…、凄げぇ…、こいつら不死身か!?
良治の目には、知らぬ間に涙が溢れていた。
よし…。
やってやる! やってやるぞ!
良治は、巨大ナイフではなく、手前の蕾に打ち込んだ。




