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「やばいぞ!
あれを撃つつもりだ!」
永田は、押し殺した声で呟いた。
「マズいんですか?」
誠は聞いた。
「俺のバリアーってやつは層でできていてな。
まぁパイの生地みたいなものだ。
少々の傷なら層を作り直せば復旧できるんだが、あいつ、さっき、同じ場所に当てて来ただろ。
あれだけの長さのある刀でそれをやられると、復旧が間に合わない場合も考えられる。
最悪の場合は、な。
正直、受けてみないと、どの程度のダメージを受けるのか判らないが、あの男、何か叫んで怒り狂っていたからな。
そういう時は、影の力が何割増しにもなるものなんだ」
バリアーの中から、はるか遠くに痩せた男が見えた。
トンネルは緩やかにカーブしているので、男は壁の端、ギリギリに見えていた。
男のつきだした両手の周りには、アーチを描くように空中に影の剣が十数本、浮かんでいた。
そして、剣は一斉に男の手から放たれた。
バリアーが、ぐわり、と揺れた。
十数本の剣が、飛びながら列を作り、バリアーの同じ場所に突き刺さった。
十数本の最後の一本が、バリアーに微かに突き刺さった。
「凄いコントロールだな」
永田が感心する。
「影が膨らんでいる。また撃ってくるわよ」
「まずいな、もしも剣が刺さったまま、杭打ちのように撃ち込まれるとバリアーがもたないかもしれない」
「透過します」
誠は言って、バリアーに意識を向けた。
誠の感覚では、心の中で、一眼レフのピントを合わせるような感覚で意識を向ける。
心の中のシャッターを押せば透過が出来る、感じだ。
ガシャン、と金属的な音がして、バリアーに刺さった剣が、バリアーから落ちた。
「修復、間に合うの?」
美鳥が早口に言う。
「判んねぇ、急ぐだけだ!」
永田が叫ぶ。
「次の攻撃は透過します」
「誠君に頑張ってもらった方がいいようだな」
焦りを滲ませて、永田が答えた。
「それにしても、ダンサーはどうしているのかしら。
蝶を飛ばしてみるわ」
バリアー内で慌ただしく会話が交わされる中、三人から離れて、痩せた男は沸き上がる怒りのまま、剣を一斉発射した。




