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誰かが、自分の足を引っかけている?
さすがに、長く激しい戦闘経験を持つアクトレスには、それが判った。
判ったが、防げない。
スピードを緩めれば、小娘の蝶が襲ってくる。
今は、いつ坊やの落とし穴が開くか判らない以上、動きを止めるわけにはいかなかった。
アクトレスは、確かに何度も坊やの落下を回避してきたが、だからと言って透過が怖くないわけではない。
一瞬の油断で、地の底まで落とされてしまう。
生き埋めにされる恐怖は、誠に近づくほど増してくる。
一度でも落とされたものにしか判らない、足元の地面が消えるという生理的な恐怖だ。
だから速度を増すのだが、すると何者かがアクトレスの足を、一瞬だけ掴み、消え去る、と言う攻撃を繰り返していた。
強い、というほどの攻撃ではない。
だが、状況をよく見ており、一番嫌な瞬間に足を掴まれるので神経に触る。
微睡んでいるベッドに、蚊の羽音が聴こえてくるような苛立たしさ。
バリアーの男か、小娘の技か、判らない。
嫌な小技を持っている、と思うしかない。
しかし、小娘を仕留めた、と思った瞬間に、やれれるとは!
足を掴まれ、一瞬、引っ張られた。
最高にスピードが乗っているところで、やられたため、アクトレスは思わず、よろけてしまった。
最悪のタイミングだった。
アクトレスは小娘に投げられた。
不意打ちで頭をコンクリートに撃ち付けた分、前より効いた。
頭が真っ白になった瞬間、坊やの落とし穴が開いた。
やばい!
アクトレスは、少し慌てた。
坊やは利口だ。
一番嫌なタイミングで落としにかかる。
だが…。
鴉になってしまえば、透過も怖くはない。
変身し、羽ばたこうと思った時…。
穴から、黒い、少年の手が、伸びてきた。
まさか、これは坊やの?
鴉は、身体をがっちり掴まれ、小さくなったことが仇となり、穴に吸い込まれていった!
あの坊や。利口なだけじゃない!
影繰りになって、たった一日だっていうのに、二つの能力が使えるなんて…。
さ…、サイコーに凄いじゃない‼
アクトレスに出来たことは、頭が埋まらないように、必死に首を伸ばすことだけだった。




