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「兄貴!
ピアスの男が声を上げた。
「見つけたぜ! モクモク影を撒き散らしてやがる!」
「あー、俺も分かった。
泣いてるなぁ。ありゃあ目立つ。機関車みたいだ」
ピアスの男は舌打ちする。
「彼女に抱き抱えられてよぅ。あのリア充小僧め。
兄貴、泣く男ってモテんのかねぇ?」
「さぁ、泣いたことがないから分からんな。
おっ、ニュースだ。殺人だとよ。
三年生が服をズタズタに切り裂かれて、校舎の一階で潰れていたらしい。近くにナイフが落ちていた、か。
こりゃ、奴だな」
「あのヒーヒー泣いている餓鬼がかい?」
「地面にめり込んだ男。
どうしたら、あんなになるのかと思ったが、奴の力はきっと落とす力なんだ。
三年生だから、三階か四階か、そこから落としたんだよ」
「落とす力? そんな影、聞いたことないぜ?」
「野生種だからな。普通の影繰りにゃあ思いもつかない力が出るんだ。
なにしろ何の修行も努力もしないで、いきなり影と契約しちまうんだからな。
おい、良治。やべぇぞ!
奴が目覚めたのは昨日の十時だ。まだ十二時間も経っちゃいねぇ。
だが奴は、人が落ちるスピードで、次々と床を消していったんだ。三階なら二つの床を連続で、な。
落ちるスピードって言ったら、とんでもない速さだ。
たった半日で、これだけ連続で能力が使える影繰りなんて見たことあるか?」
良治と呼ばれたピアスの男は、ポカンと兄貴を見上げた。
「なんかの間違いだろ? 影と契約できたって、それから自分の技を磨くのに何年もかかるんだぜ」
「奴は十二時間で、もう次の段階に入っている。
良治。今夜仕留めるぜ。
一日過ぎれば、普通の影繰りの何か月分も、奴は信じられないスピードで進化する。絶対失敗しちゃあならねぇ。
最初は、影同士の戦いには戸惑うはずだ。ル-ルも何も分からねぇんだからな。
だが、もし奴に逃げ切られたら、その次ぎ合うときは、もう別人だぞ」
「なぁ、そりゃあ思い過ごしなんじゃねぇのか? ただの変態殺人事件が、変なタイミングで起こっただけなんじゃ?」
「そうかもしれねぇ。違うかもしれねぇ。
俺たちは最悪を想定して仕事をするんだ。判るな。
俺の見当違いだったら、狩りは楽なもんだろう。
それはそれでいい。な、そういうことさ。十分な注意をするんだ」
良治はコクンと頷いた。
「じゃあ、奴を追跡して塒を突き止めるぜ。
くれぐれも注意しろよ。奴の感知能力が、どの程度だかわからねぇ。遠くから追いかけるんだ!」
男たちは、屋上から飛び降りると、音もなく隣のコンビニの屋根に降り立ち、走り始めた。




