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シャドーダンス  作者: 六青ゆーせー
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「やばっ!」


さすがの獣も、ダンサーのコンビプレイの前に狼狽えて逃げ回るのを見て、レディは内心、ほくそ笑んでいた。

それが瞬きをするほどの間に、永田のバリアーを砕いていた。


「やはり一筋縄ではいかないな、あれは」


ミオは叫んで、素早く蕾を開くと走り出した。


背後でレディが叫んだ。


「バカ、ミオ、慌てるんじゃない!」


その声自体も、上ずっていた。



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油断していた。

ダンサーが来るまで持ちこたえれば終わりだと、どこかで思っていた。

俺は何年、影繰りをしているんだ?


永田は自分を叱責した。


バリアーを薄くしたつもりは毛頭ないが、どの道、影は影繰りの心の力だ。

使い手が油断をすれば、影は脆くなる。


バリアーを破った獣の爪は、そのまま永田の背中を抉り、ずたずたに引き裂く、はずだった。


永田は、二人の子供を抱いて倒れ、慌てて起き上がった。

庇ったはずの子供の一人、美鳥が、永田より先に起き上がり、獣の前に立ちはだかっていた。


「美鳥っ、止めろっ!」


だが美鳥の周りに、蝶が集まってくる。


キャハッ!


獣は叫んでいた。


「お嬢ちゃん。無駄な抵抗はしない方が利口だよ!」


少女の体を、黒い影の蝶が覆っていく。


「それはどうかしら?」


獣の顔が、一瞬で沸騰した。


「馬鹿めっ!」


獣は叫んで、狂暴に爪を横に薙ぎ払った。


真っ黒に、影の蝶で覆われた少女が、爪を受け止めようと手を伸ばしている。


獣は笑った。


いっちょ前に、腕絡み投げの動きだよ!


だが。


腕の先には狂暴な爪が伸びているのだ。

腕を受け止める前に、胴体は千切れてしまうだろう。


爪が、真っ黒に染まった少女に触れる。


少女は、獣の腕を掴んだ。


爪が通らない?


あっ、と叫んだのは獣だった。


少女は、いつの間にか黒い鎧で覆われている。

そもそも少女の蝶は、獣の動きを封じ込めるほどに強靭だった。

それを、今、少女は鎧にして纏っていた。


しかも…。


いつの間にか、獣の爪も、黒い蝶が何重にも貼り付いていた。


やられたぜ…。

こいつも、それなりに影繰りって事か…。


美鳥に腕を取られ、獣は横に滑った。

獣の想像以上に早く、美鳥は獣の懐に入ると、くるり、と体を返した。


今や、四百キロを越える体重を持つ獣が、巨体を虚空に投げ出され、コンクリートに叩きつけられていた。


獣は考えを改めていた。


幼く見えるので馬鹿にしていた。


だが少女は、合気道の技で、牛ほどもある、いや、大抵の牛より、よほど大きい獣を、鮮やかに投げて見せたのだ。


「永田さん、怪我は?」


美鳥が聞いた。


永田は背中に触ったが、傷どころか、来ていたスーツにも傷はない。


「誠君か?」


誠は、にっこり笑って、上手くいって良かったです、と照れた。


全く俺は何をやってんだ? チビたちに助けられてよぅ…。


永田は唇を噛んだ。

血の味が広がるが、それが永田なりのけじめだった。


「バリアー、張んぞ!」


永田は言うが、美鳥は対戦中だった。


「永田さん、僕が透過しますから、ここはバリアーを張りましょう。

このままじゃダンサーさんたちも戦いづらいでしょうし」


誠が囁く。


黒い蝶が飛んできて、美鳥の声で囁いた。


「誠君の言う通りよ。

永田さん、バリアーを張って」


美鳥が外に出ているのもダンサーの邪魔になるんじゃないか、と永田は思ったが、状況的に、すぐ美鳥が獣を振り切ってバリアーに入るのは不可能なようだ。

仕方なく、永田はバリアーを張った。

 

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