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バリアーの中では、永田が溜息をついていた。
「やっと来てくれたか、ダンサー」
「二人いますけど、どっちがダンサーさんなんですか?」
誠が聞く。美鳥は教えた。
「ダンスは一人では踊れないんですって。だから二人でダンサーチームなのよ。
いつも一緒で、いつもアツアツ」
「二人とも格好良いですもんねぇ。芸能人みたいだ」
まぁ、ね。
と美鳥は、困ったように笑った。
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ミオはボクシングスタイルをとり、滑るように歩み始めた。
後ろにレディが楚々とついてくる。
一方、黒い獣は前足を低く構え、いつでも飛び掛かれるようにして、直線で進む。
左右に巧みなフットワークを使いながら近づいてくるミオに、鼻に皺をよせ、獣は唸った。
ミオの足が、滑るように獣に向かう。
同じタイミングで、獣は空中に跳んだ。
前回、ミオの影に触れた途端、鋭い斬撃が襲ってきたことを獣は謎の攻撃として頭の隅に残していた。そのため遠距離から最速で接近しようと判断したらしい。
だが…。
ミオの足元から影が広がっていた。
宙にいる獣の胴体を複数の痛みが同時に襲った。
それには構わず、ミオの顔面に鋭い爪を落とそうとしたのだが、ミオは獣の爪を掻い潜るようにギリギリで避けた上、獣の鼻先に鋭いジャブを突き刺していた。
獣の顔が、瞬間、横にねじれるような強烈な一撃だった。
だが構わず獣は、噛み付きにかかった。
獣の牙が、ミオの顔面を捕える、かに見えたが、ミオは屈んで牙を交わす。
そこに獣の爪がミオの後頭部を直撃した。
しかし…。
獣の動体視力は、とんでもない動きを捕えていた。
爪がミオの頭に落ちる瞬間、後ろのレディが、ミオの前に滑りこんだのだ。
獣の懐内での出来事だ。
くるり、とソシアルダンスを踊るように、二人は廻った。
すると花の蕾が閉じるように、ミオの足元から広がっていた四つの花弁が二人を包み、獣の爪を弾いてしまった。
サラリーマンのバリアーとも違う。
いうなれば盾で受け止めたのではなく、なにか剣のようなものが、ぶつかって爪を弾いた感触だ。
そもそも獣の爪は、像の分厚い皮膚でも切り裂くほどの威力を秘めている。
なまじっかな攻撃では、弾くどころか押し潰されてしまうはずだ。




