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シャドーダンス  作者: 六青ゆーせー
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永田のバリアーに背を向け、一転して走り去ろうとする黒い獣に、大量の蝶が襲い掛かる。


黒い獣を覆いつくし、黒い繭にするように、どんどん体に貼り付いていく。


だが、巨大な爪が一閃すると、引き裂かれた蝶が空中に四散した。


それでも鬱陶しいらしく、黒い獣は飛び跳ねながら、蝶を蹴散らそうと盛んに前脚を揺り回す。


だが…。


心なしか、黒い獣の動きが鈍くなってきた。

振り回す腕の力が落ち、蝶を切り裂けなくなる。

後ろ脚に至っては、固まってしまい、全く動かない。


そのタイミングで、誠は落とした。


予め美鳥と立てていた作戦だ。

美鳥の蝶は敵に貼り付き、剝がれなくなる。何十羽も重なると動けなくなる。

そのタイミングで敵を地の底に落とすのだ。


黒い獣は落ちた。

今度は万全だった。


獣は、固まった姿そのまま、コンクリートの中に落下した。


「やった!」


誠が叫んだ瞬間、思わぬことが起きた。


蝶が、目的を失ったかのようにばらけ、飛び去ったのだ。

そして、蝶の群れの中から、漆黒の鳥が飛び出してきた。


鳥は空中で、ケケケと笑い、嘲った。


「あたしはアクトレスと異名をとっている。

どうしてだ?


色々に変身し、使い分けるからだよ、残念だったね!」


高く嘲笑する黒い鳥、猛禽の大きさの鴉のようだ、は空中で回転し、地面に戻った時には再び、黒い獣になっていた。


そのまま猛獣の瞬発力とパワーで、永田のバリアーを横殴りにする。


バリアーが再び、揺れた。


黒い獣はバリアーを蹴って、飛び上がった。


美鳥の蝶は、それを必死で追いかける。


「残念だけど、それを、もう一度食うアクトレスさんじゃ無いんだよ」


言うと、女のたてがみが、三六〇度に伸び広がった。

大量の蝶を突き刺し、たてがみが戻る。


「あたしと遣り合うには、ちょっと役不足だったね、あんたたちは!」


叫ぶと、獣は再び、横殴りにバリアーを殴った。


永田が舌打ちする。


「連発で貰うとキツイぜ…」


黒い獣は、ボクサーがフットワークを使うように左右に跳んで、自在に位置を変えながら前脚で攻撃を続ける。


誠は、その着地のタイミングで、再び黒い獣を落とした。


獣は両手を広げるが、誠もそれは織り込み済みだった。

獣は地面に消えるか、と思われたが、瞬間、鳥になって舞い上がった。


鳥に、美鳥の蝶が覆いかぶさっていく。

相手の体が小さければ、それだけ蝶は少なくとも、行動不能に出来る。


だが、鳥は突然、膨張した。

巨大な獣になり、美鳥の蝶を粉々に舞い散らかした。


獣は、そのまま敏捷に地面に降りると、疾走する。


誠が、タイミングを合わせて、獣を地面に落とす。


獣は、たてがみをハリネズミのように広げて、長く伸ばし、自分の体を支え、身体をねじって反動をつけると空中に飛び出す。


瞬間、黒い獣が消えた。


何か黒いものが、くるくると空中を飛んでいる。


しなやかに着地したのは、黒い猫だった。

と、そのまま巨大化し、黒い獣の姿に戻る。


「坊や。

何事もやり過ぎは感心しないねぇ。

こっちもタイミングを覚えちまうからねぇ」


ふふふ、と笑い、黒い獣は疾走する。

地面を蹴って、なんとコンクリートの壁面を走り始めた。


永田は、しかし美鳥たちの作った僅かな時間で、バリアーを強化していた。


化け物め、驚くなよ…。


心で呟く。


黒い獣はトンネルを疾走し、バリアーの横を駆け抜けると、唐突に天井に飛んで、一八〇度進路を変えた。


一瞬のフェイントである。


獣が、永田のバリアーに両手を打ち下ろした。


半球形だったバリアーが突然、姿を変えた。


ウニのように、無数の棘が飛び出していた。

獣は、空中で棘に差し貫かれ、自重で、より深く、棘に刺さっていく。


最悪のタイミングで、カウンター攻撃を受けたのだ。

バリアーが防御だけの力だと、無条件で思い込んでしまったのだ。


「きぃ…さまぁ…!」


獣は、バリアーの中の永田を睨みつけた。


「少しは驚いてくれたかな。

これでも伊達に三佐なんてやっている訳ではないんでね」


永田は、薄く笑った。


だが、黒い獣は、恐るべき手段に出た。


自分で、後ろ足を棘の中に踏み入れていく。

深々と傷を負う代わりに、後ろ足の力で、前足の棘を引き抜き、身体を抜くと、ドスンと地面に落ちた。


呆気にとられ、誠は思わず獣を見つめてしまった。


美鳥が、「落とすのよっ!」と叫び、慌てて落とした時には、一瞬早く、獣は背後に飛んでいた。


「なかなか、やるじゃねぇか!」


叫ぶと、獣は走り出した。

トンネルを天井まで使って走り、ぐるぐるとバリアーの周りを走り回る。

血が、ところどころに飛び散っているが、全く意に介していない。


「ごめんなさい!

タイミングを外したっ!」


誠は叫ぶが、永田が言う。


「馬鹿なこと言ってんじゃねぇ。

そんなことで集中力を切らすんじゃねぇぞ!

奴は、また来る!」


獣は作戦を変えたようだ。

足を止めずにバリアーの横を駆け抜け、爪でバリアーを叩いていく。

天井から、側面から、三六〇度を天地に使って、自在に攻撃を加えていく。


叩かれるたびに、バリアー内には、ズンッ! と思い衝撃音が響いた。


獣はトンネルの奥まで走り抜け、ジャンプした。

今までとは桁違いに加速をして、全力で誠たちに突っ込んでくる。


美鳥の蝶が壁のように広がり、獣を抑えようとするがスピードが違う。


蝶の壁は、木の葉のように千切れ飛んだ。


目に歓喜の光りを宿し、獣の手がバリアーを打ち破ろうと高く掲げられた。


瞬間、獣は何かに躓き、盛大に地面を転がった。


慌てて周囲を見回すが、彼女を倒すようなものは何もない。


そこに再度、蝶が襲い掛かった。


黒い獣は、前足を振り回して応戦する。


が、再びドサリ、と倒れた。


群がった蝶が、獣に襲い掛かる。

獣の周りを蝶が覆いつくすが、それは前もあったことだ。


獣は猫に変化し、蝶の覆いを切り破り、飛び出した。


「アクトレス!

まさに変幻自在ねっ!」


獣は身を沈め、バリアーに襲い掛かる姿勢を見せた。

獣が、飛び出した瞬間、永田は棘を発生させた。


が、それはフェイントだった。


獣は軽くジャンプをし、棘の前に着地すると、狂暴な爪を横に払った。


棘がポキポキと折れていく。


「まずいぜ! バリアーが薄くなる!」


永田は、内側にバリアーのそうを作ろうとした。


その時。


バリアーの前で爆発が起こり、さすがの獣も、弾き飛ばされた。


「やぁ、狼君。

今度こそ決着をつけようじゃないか」


ベルサーチの男、ミオが線路に片足をかけて、立っていた。

彼女の後ろには、純白のナイトドレスの少女レディが控えている。


黒い獣は舌打ちした。


「また、お前らか? 変態カップル」


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