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誠は俯いて歩いていた。
あまりキョロキョロすれば浮くかもしれない。
沈痛な表情で俯いているのが一番だと考えた。
「小田切君、あんまり悩まない方が良いよ」
気が付かなかったが、教室から列を作って帰宅したため、霧峰静香が隣にいた。
「なんだか。
僕が最後に松崎と話したのかもしれないし、ね」
習慣で口角が上がってしまった。
「仲良かったんだね」
「そんなことないよ。あいつは嫌な奴さ。だけど…」
「なんだか、お金を取ったりしていたらしいよ。不謹慎かもしれないけど、バチが当たったんだよ。
あたし、そう思う…」
バチか…。
そんなものがあるなら、この僕にも…。
誠は呟いた。
「馬鹿なんだよ、あいつは…」
不意に誠の目から涙がこぼれた。
自分でも驚いたが、突然、今まで思ってもいなかった感情が込み上げてきた。
「馬鹿だよ! せっかく推薦がとれたのに! バカばっかりして、最後まで…」
涙が勝手に流れて、誠は両手で頭を抱えた。
なんで涙なんか出るんだ? 松崎は一欠片もいい所なんて無いような屑だったのに? 何に僕は泣いているんだ?
分からなかったが、胸で暴れる感情を、誠は抑えられなかった。