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「嬢ちゃん、俺の後ろに!」
永田は叫んだ。
想像以上に速い。
あの、スケートの男だろうか?
美鳥と誠を背中に隠すと、永田はバリアーを張った。
スケート男でも破れないだけの頑丈な壁を作り出す。
美鳥の蝶がバリアーの周りを飛び始めた。
数百羽、いや数千羽はいるだろうか?
作戦には十分な量だ。
トンネルのカーブの先から、黒い塊が見えてきた。
スケートの男じゃない。
どうやら敵の増援らしい。
それにしても、あの姿…。
永田は思い出した。
アクトレスとかいう、女の影繰りの話を…。
巨大な狼に変身する、まさに狼男ならぬ、狼女だ、という話だ。
フリーで仕事を受ける影繰りであり、東欧の内戦では一人で要塞を陥落させている。
イラン、パキスタン、アフガニスタンでも様々な軍に雇われて、数々の功績を残し、欧米伝説の妖精犬ブラックドックと異名をとった、まさに軍事活動のエキスパートだ。
最近、話を聞かないと思ったら、日本に帰ってやがったとは!
永田は慌てて、バリアーの外に、新しいバリアーを追加した。
永田のバリアーは、通常の場合、バームクーヘンのように薄いバリアーを何層にも重ねて強度を増す構造をとっている。
簡単に増減できるし、単純だという事は、すなわち早いということでもある。
戦闘の機微に合わせて素早く対応するために考えた、永田ならではの工夫だった。
スケート男の攻撃に耐えたバリアーに、さらに十枚のバリアーを追加した。
来てみろ!
戦車だって止めて見せるぜ!
永田の額に、うっすらと汗の粒が浮かび始めていた。




