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匂いが止まった!
女は急ブレーキをかけて、周囲を見回した。
地下鉄の駅は、近くには無さそうだ。
坊やの匂いは、他の二人の臭いと一緒に、ほぼ女の真下の位置にあった。
地下か…。
おそらく地下鉄だとは思うが、あの坊やの事だ、早とちりをしたら、まんまと騙されてしまう。
女は、ハーレーのエンジンをフカした。
女はバイクを好んでいた。
渋滞でも、車の脇を擦り抜けて走れるし、横道なども利用すれば、都心部ではフェラーリよりも圧倒的に早い。
昔は…。
昔は、よく弟を後ろに乗せて、三浦岬や江の島あたりまで流したもんだっけ…。
女はスマホで地下鉄の路線図を調べた。
六本木の駅が近いようだ。
女はバイクを発進させた。
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「止まったわ!」
分銅を見ながらレディが言った。
「君の言う通りだったようだね。
彼らは地下鉄に誘い込もうとしている。それで間違いないだろう」
タクシーは、方向転換に手間取って、女とはだいぶ距離が開いてしまっていた。
むろん、二人は、そんなことは知らなかったが…。
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「止まってる?
六本木駅の近く?
どういうことだ? 降りて調べてみる? いやいやいや、ちょっと待て。
俺たちを待って…」
大男はスマホを見つめた。
「切りやがった。
やばいぞ良治、あいつを野放しにしたら、また東新宿の駅みてぇになっちまう!」
幸い、大男は、青山通りを戻っているところだった。左折して六本木に向かうのは容易だ。
大男は、アクセルをいっぱいにフカした。




