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「兄貴。
餓鬼どもがぞろぞろ出てくるぜ? ゆとりじゃねーから、午後までみっちり勉強するんじゃねぇのか?」
二人の男が、学校に面するマンションの屋上から、双眼鏡で帰宅する子供たちを見下ろしていた。
大男が呟く。
「何事か起こったらしいな。サツが何十人来ているんだ?」
「パトカーだけで一ダースはあるぜ」
耳にピアスをジャラジャラ付けた男が、ヘラヘラ笑った。
兄貴と呼ばれた男はジーンズのポケットからスマホを取り出してイヤホンを片耳に付けた。
「そのうちラジオで報道するかもな。どうやらマスコミも集まっているようだ。昨日の今日だし、高円寺は大変だな」
「しかし兄貴。これだけゾロゾロ餓鬼ばっかり歩かれたら、見落としちまうぜ?」
「馬鹿野郎。目で見るんじゃねぇ。
奴はまだ影の止め方を知らねぇんだ。指切りした小指から影がダダ洩れなはずだ。それを感知するんだよ」
「おっ、そうか! さすが兄貴だぜ!」
二人は警察を気にすることもなく、のんびり会話しながら子供の列を見下ろしていたが、誰一人として、彼らに気が付かなかった。
彼らの周囲には、ぼんやりと影が漂い、二人の姿を見えにくくしていた。




