70
70
「誠君、ここはどこなんだ?」
永田は唖然と質問した。
始めて誠の能力を体験したのだ。
硬いはずの物質を通り抜けて、その先に出るというのだから、驚かない方が無理と言うものだ。
感覚としては…。
まるで、影のシャワーを浴びたように、いとも簡単に、永田はコンクリート構造物を通り抜けていた。
恐らく、永田の通過した影のシャワー部分には、鉄筋の金属部分もあれば、もしかすれば上水道、下水道、高圧電線だって通過した可能性はあったが、まるで何も感じない…。
そこは、別のプラットホームだった。
「半蔵門線です。
もう、電車が来ますよ」
誠は、弾む声で言った。
登る力はまだないが、作戦は成功した。
もし、敵がヒカリエの地下構造を熟知していたら発見されるかもしれないが、それなら銀座線まで同じように登れるはずだ。
だが、幸い、敵は半蔵門線ホームには現れなかった。
誠たちは電車に乗った。
誠は、暇を見つけては手を動かせていた。
影らしきものが現れるのは美鳥も認めていた。
だが、どんな力が現れるのかは全く分からない。
「今のところはそれでもいいが、手を動かさずに出せるようにするといいな。
ちょっと、影と接触させてみるか?」
永田は言い、バリアーと誠の影を触れさせた。
「何か分かったか?」
「ええ、凄く硬いです」
「俺には、ぐんにゃりした感触が残った。
まるで人体に触れたみたいだ」
「上に登る力になるんでしょうか?」
「まだ、何ともわからんね。
せめて持続して出せるようになればな」
「持続して出す…」
誠は言われたとおりに、手を使わずに影を出そうとした。
そして、なるべく長く出すように。
床の影を見ると。
誠の小指の影から、細く髪の毛ほどの影が地を這う昆虫のようにゆっくり進み…。
列車の床の、別の影に接触するという瞬間、影が丸まり、ピクリ、と動いた。
「あっ…」
三人が同時に声を上げた。
それは、人の手。
誠と同じくらいの、人間の手の形をしていた。




