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「いたっ!」
声が聞こえた瞬間、大男は良治に伝えていた作戦を実行に移した。
すなわち、地下駅を暗黒にするのだ。
敵が何人いようが、最も怖いのは、あの餓鬼だ。
一瞬で地下に落とされたら、戦法も戦略もクソもない。
だから、味方がいようと、敵がいようと、まず真っ暗にする必要があった。
声が、敵の誰かか、変態女だろうが知ったこっちゃない。
なぜなら、餓鬼の恐ろしさを知っているのは自分たちだけなのだから。
大男は、闇に包まれた駅の構内を、スケートのように滑り始めた。
どうやら餓鬼は、あの方南町の駅員が言っていたように、同じ年頃の女と、環七で倒したはずのサラリーマン風の男と一緒に行動していたようだ。
サラリーマンの影は強力だが、破れないことはない。
少女の力は未知数だが、大男が接近して格闘戦に持ち込めば、負ける可能性は、まずない。
そして、男には素早く接近戦に持ち込む手段があった。
地面に影を放出することで、平面ならばスピードスケート並みの速度で疾走できる。
加速が付けば、百メートルを六秒台で走れるのだ。
だが、それでも餓鬼の力はヤバすぎる。
男は、加速を得るため、体を小さく丸め、速度を上げていった。




