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ハーレィダビットソンは交通渋滞に巻き込まれていた。
どうやら明治通りで工事が行われているようだ。
普段なら、敏感に臭いを察知して、工事などで足止めを喰らう事は無いのだが、女は坊やの匂いに夢中になってしまい、思わぬ足止めを喰らってしまった。
脇道に逃れようにも、路上駐車がびっしり並んでいて、動きが取れない。
このままでは、悪者に坊やを取られてしまう!
女は、強引に路駐の車の間にハーレィをねじ込んだ。
側面はスモークガラスで隠していたが、正面に回ると、中は丸見えだった。
安物の国産車の中で、馬鹿そうなカップルが、シートを倒して、お安く愛を交わしている最中だった。
窓を閉め切っていなければ、坊やの匂いを追跡しながらでも、前もって判っただろう。
女はブチ切れ、エンジンフードを蹴飛ばし、サイドブレーキをかけた車を、軽々と二メートルほど吹き飛ばした。
馬鹿カップルが真っ青になる中、車は後部ボンネットが後ろのポルシェに突き刺さった。
一瞬で、水平対向六気筒ターボエンジンが爆発した。
素っ裸の男女二人が道路に飛び出す中、紅蓮の炎が巻きあがり、ポルシェは紙風船のように吹き飛んだ。
炎上する車の列を背景に、漆黒のハーレィは歩道を百メートルほど爆走すると、脇道に飛び込んでいった。




