57
57
渋谷に最初に到着したのは誠たちだ。
いや、その前に永田は既にホームに立っていたが…。
「永田さん、その足!」
永田は松葉杖をつき、スーツの上着にジャージのズボン、太ももには白いサポーターのような物をがっちりと巻いていた。
「ちょっと油断したんだ。
動脈をやられたんだが、もう大丈夫だ」
「体力の減少は、即、戦闘力の減少につながるわ。無理は出来ないわね」
美鳥が言う。
永田は困った風に頭を掻き、申しわけない、と謝った。
「だがドクター吉岡に治療してもらったからな、傷は塞がっているんだ。
ま、格闘戦はやりたくはないがね」
「ドクター吉岡って誰ですか?」
「お医者様で影繰りなの。
影を使って、体内の細部、それこそ毛細血管レベルで治療が出来るのよ。
だから永田さんも短時間で傷が塞がったわけ」
「凄い。
そんな人までいるんだ」
「理科学分野でミクロの作業を得意とする影繰りだっているんだぜ。
影の力は千差万別でね。荒事向きの力ばかりじゃないんだ」
「えっ、学者さんまでいるんですか?」
美鳥は、影繰りは怪物で、内調は首輪をつけて怪物を飼いならすのだ、と言っていたので、誠はもう、影の世界で殺し合う人生しか残っていないのか、と心の底では思っていた。
「そうさ。
君もしっかり勉強して、その力を人生の進歩に役立ててくれよ」
ハハハ、と永田は笑った。
「話の腰を折るけど、敵は私たちを、どうにかして察知しているらしいの。
通信機の傍受って事も考えられるけど、もしかしたら特殊な能力かもしれない。ダンサーのように。
それで誠君が考えた作戦だけど…」
永田は頷きながら、美鳥の言葉に耳を傾けた。




