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「誠君。あなた、わざとギリギリに落ちているの?」
美鳥が驚愕して聞いた。
「えっ、だって電車のど真ん中に突然現れたら、おかしいでしょ?
扉の隅なら目立たないじゃないですか?」
「走っている電車の、この一画を狙って落ちられるものなの?」
誠はちょっと考えて、頷いた。
「問題ありませんよ。それより、もっと重大な問題が起きてしまいました」
美鳥が首を傾げた。
「大江戸線のホームが爆発しました。
落ちるときに居た、あの二人組の影繰りの仕業のようですが…、どちらの仕業か、までは判りません。ですが僕の計画には大ダメージです」
「そうなの?」
「はい。大門駅には大江戸線と浅草線しか乗り入れていないんです。
ルートが事実上一つに絞られてしまうでしょう」
「敵は、私たちの目的地が浜松町だとは知らないでしょう?」
「でも、新しく現れた敵が気になります。
どうして僕たちが、あの駅にいると分かったんでしょう?」
「永田さんか私の電話を盗聴したのかしら?」
「軍隊並みのセキュリティなんですよね?」
美鳥は目を細め、呟いた。
「そう考えると、情報漏れしているのは、このスマホって事よね。
私のこれも、かなり安全なはずなんだけど、通信は控えた方が良さそうね」
「特殊な能力、例えば遠くの音を聞く能力があるとか、考えられませんか?」
「実際のところ、この世にどんな影の能力があるか、誰も全てを把握はしていないわ。誠君の力も、実際に見るまでは信じられなかったもの。可能性は否定できないわ」
誠は、美鳥の耳に口を近づけ、囁いた。
「ならば可能性は潰した方が良いですね」
美鳥は頷いた。
「他のルートにすることも考えられますが、永田さんが待っている以上、渋谷に向かった方が良いですよね?」
「ええ。ダンサーなら、連絡なしでも追跡してくれるわ」
「それで、ちょっと相談なんですが…」
声を潜めて囁き合う二人を乗せて、副都心線は渋谷に疾走していた。




