40
40
良治は、ああっ! と叫んで、立ち止まった。
「バカ良治、止まるんじゃねぇ!」
大男は怒鳴ったが、良治は誰もいないホームを指さして、気の抜けた声を出した。
「兄貴…。奴ら、消えちまいやがった…」
大男は、はっ、と驚き、階段を駆けあがった。
二人の姿はどこにもない…。
まさか落下に失敗したのか? 俺たちを落とすつもりで、逆に自分たちが落ちてしまったのだろうか?
ここは地下駅だ。
この下には、もう何もない…。
男は、思って階段を振り返った。
大江戸線、乗り入れ口?
んっ、大江戸線?
ま、まさか?
そんなことが人間に可能なのか?
思ったが、奴は走っている自動車から下の陸橋を抜けて、その下にある横断歩道に落ちたのだ、と気が付いた。
ただ落ちるだけで出来る芸当じゃねぇ。大段歩道の幅は五メートルも無いし、後の部分には障害物が沢山あって、落ちれば怪我では済まない構造だった。
下手なところに落ちたら、いくら影繰りだって無傷では済まない。
まだ影も纏えていない餓鬼は、致命的な負傷を負いかねない。下が見えていなければ、怖くて自分が落ちることなど、とても出来ないはずだ。
奴は地面の下が見えている。
考えてみれば、あまりに不自然な場所に立っていたし、列車から降りた時、俺たちを落とさなかったのも計画があったからかもしれない。
それとも射程距離より遠かったのか? どちらかは判らないが…。
「良治! 奴は下の大江戸線に落ちたんだ!」
「ええっ! そんな馬鹿な!」
「だから、奴は凄い速さで進化している、と言っただろう。
野生種なんだよ。
とんでもねぇサラブレットなんだ! 行くぞ!」
「大江戸線にかい?」
「それじゃ永遠に追いつけない。奴はもう動く電車の中だろう。
車で先回りして、新宿のホームで捕らえるんだ!」
大男は全速力で駆けだした。




