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シャドーダンス  作者: 六青ゆーせー
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良治が影の壁を両手で押していた。

唸り声を上げて押し込むが、びくともしない。

良治は座り込んだ。


「駄目だ、兄貴、俺の力じゃ、どうにもならねぇ」


「まっ、そうだよな。お前が壊せるぐらいの壁なら、のんびり煙草なんて吸ってないだろ」


「だけど兄貴ならイケるんじゃねぇのか?」


まぁ、そうなんだが、相手がもし日の丸だった場合、荒事にしたくねぇんだよなぁ…、と大男は考え込んだ。


「良治。

奴を殺したくねぇ。出来るか?」


良治はフルフェイスのヘルメットを傾けて考えていたが、やがて大きく頷いた。


「足を撃ちゃあ平気だろ。撃てる位置に移動するよ」


「奴に感づかれないよう、頼むぜ」


良治は立ち上がり、横に動いて、今度は車に張られた側の壁を押し始めた。そこならばサラリーマンの足を狙えそうだ。

時間を随分消費してしまった。

五、六分は経っているだろう。餓鬼に追いつきたいなら猶予はない。


大男は歩道側の壁に対峙した。

外のサラリーマンに気付かれないように、小さく空手の構えをとり、瞬間、影を拳に凝縮させた。






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思わず煙草を取り落としてしまった。

影が急に増大したのだ。

慌てて振り向いたとき、巨大な男が壁に向かってパンチを放っていた。


パンチ?


永田は混乱した。

誠少年を襲った時、この男はスケートのように地面を滑りながら、何かを、倒れた少年に撃ち込もうとしていた。

立った姿勢で寝転がった人間を攻撃するのだから、影の力は、槍のような長い棒状のものか、接近しなければ撃てない類の射程の短い投擲型兵器、石やナイフ、火炎放射などかと思っていた。


パンチなのか?

それとも、体のどこでも一点に集中して放つ一撃必殺の技なのか?

スケート状態なら、例えば蹴りとしても放てる、というのだろうか?


とにかく、素早い攻撃だった。

一瞬でMAXに達し、純粋に壁を殴りつけた。

型としては、空手の正拳突きのようだった。


壁が震えた。


時速一五〇キロで走る大型トレーラーをも受け止める永田の壁だが、この攻撃は持ちそうもなかった。

一点に力が集中しているのがまずいのだ。

何万トンもの水を受け止めるダムも、一点に強力な力を加えられれば破壊される。


破られる!


と思ったが、その時永田は、そう慌ててもいなかった。


壁は壊されても、すぐ、また作ることが出来る。


永田の特技は、壁を作ることよりも、その技を長時間持続させることにあった。仮に壊されたとしても、すぐに作れれば壊されないのと同義になる。

ようは逃げるタイミングさえ無ければいい。

その時、永田は、そう考えていた。

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