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陸橋の下に、誠と少女は立っていた。
「ああ、上手くいって良かった。
自分が落ちるのも、人と落ちるのも初めてだったんです!」
誠は興奮気味に言った。
少女は、能力を過信するな、と注意しようかと思ったが、言葉を飲み込んだ。
今は力を伸ばす時期だ。否定的な言葉はかけない方が良い。
永田さんは近くに車を停めるはずだ、と少女は考えた。
永田の能力を考えたら、合流した方が良いか、少しでも先に逃げた方が良いか?
「方南町の駅があります。行きましょう!」
誠が少女の手を引いた。
「地下鉄? 車の方が早いわ」
「タクシーにでも乗るんですか? 相手はバイクですよ」
誠の言う事ももっともだ。何も知らないタクシー運転手が影繰りに襲われたら、永田のようにはいかない。
「仕方ないわね」
二人は方南町の駅に走った。
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一見すると、実にシュールな光景だった。
永田は後輪がパンクしたワゴン車の傍らで、のんびり煙草を吸っていた。
そのワゴン車の向かい側には、大男と細身の男が、途方に暮れたように、ぼんやり立っている。
だが、その三人の姿を、方南町の街を歩く人々は、まるで居ないように歩き過ぎていた。
影を放出することで、人目を惹きにくくしている。
写真で言えば、露出の暗い部分のようなものだ。
よくみれば人が立っていることも判るが、人間はどうしても明るく、見えやすい方に視線がいってしまう。
やれやれ、だんだん十一月らしい気温になってきやがったな。
永田は夜空を見上げた。
風が吹いて、昼の温かさを一気に吹き飛ばしていくようだった。
本来は、車に戻って暖房でも点けたいところだったが、永田がこの場所を離れると壁の力は弱くなる。
仲間の到着まで、こうしてタバコを吸っていた方が良いだろう。
嬢ちゃんに電話するか?
永田は考えたが、彼女に任せた方が良い、と思い直した。
少女とは何度も組んで仕事をしていた。お互いのやり方は心得ている。電話で手間をかけさせるよりは、今は少年を早く安全な場所へ連れて行くべきだ。
敵の背景が明らかでない。
この二人だけが少年を追っているのか、定かでもない。
敵が大きな組織なら、何組かのチームで動くことも考えられた。
永田の壁は電話の電波も遮断するが、遠くからでも影繰りが見ていれば、すぐに事情を察するだろう。
まぁ、あの嬢ちゃんは強いからな、と永田は深々と煙を吸った。




