97. 再び救済の旅を
豊達は、今後三組のパーティに分かれ活動を再開する。
マリーゴールドはヴァマルドへ行き、ギャリオンとルルはアリアス。
豊、ロシィ、ユピスは再びパシリカへと向かう。
豊は引き続き人類救済の旅をし、組織が豊に惹きつけられているその間、マリーとギャリオンが情報を集める。
こちら側には【魔装車】と【魔装艦】というこの世界の常識を超えた移動手段が存在する為、組織の監視をかき回す事が可能だ。
マリーゴールドは独自で動くと言い残し、早々に王都を出発する。
後に、王政経済大臣バルベロンが彼女を探し回っていたのを見て、まだ仕事が残っていたのを察した。
豊達はエウロ王に事の次第を告げ、ギルダム王都を後にし、両国砦まで向かう途中、ハガンカにあるルーティーン家へと顔を出す。
今回の王都を襲撃した【赤い月事件】により、民衆を中心とした王への不満が一部で高まり、各地で小さな火種が生まれたのは言うまでもない。
如何に信頼を集めたフォルトゥナ教団の後押しがあっても、元々王政に不信感を抱いていた者達は少なからず存在する。
その連中が、表立った活動をしているとの情報がビットマン氏経由で伝わった。
「奴らは革命軍を名乗ってはいるが、其の実、自分達には未来を見据える力も、民衆を導く為の力や知恵も持たぬ烏合の衆に過ぎない。しかし、多くの人々は如何に軽率であろうと、自信を持って行動を起こす人物について行く心理が存在する」
ビットマン氏は神妙な面持ちで語っていた。
この世界における、一般的な人々の知識レベルはたかが知れている。豊が過ごした情報が行き交う現代ですら、人々はメディアによる印象操作を軽々しく受ける。大半の人は自分で調べ、考え、判断し、決断、行動する事が出来ないのだ。
「良くも悪くも、信じるものを得た人間には強い力が宿ります。一刻も早く事件の真相を暴き、民衆からの信頼を得なければ、取り返しのつかない事態に陥るやもしれませぬぞ」
「うむ……ユタカの言う通りだ。早く皆を納得させる事が出来なければ、不安は募り、その感情はまた、悪しき者達によって利用されるであろう」
「我々フォルトゥナ教団は、人類の救済を掲げて活動を行なっております。如何に、ギルダム王国と友好規定を結ぼうとも、教団自らが民衆の活動に口出しをする事は出来ません。武力による破壊活動ならば止めることも吝かではありませんが、彼らはまだ、王政へ不満を持つ者を募っているだけに過ぎません」
「ギルダムの法には政治的な活動を行なってはいけない、というものが無い。今はただ大人しいだけで、恐らくは人数さえ集まれば実力行使に出るであろう」
「クーデターは避けたいところですね……ハガンカにも、革命軍の手は及んでいるのでしょうか?」
「むしろ、このハガンカこそ奴らの拠点のひとつだ。ここは王都、ドガルド、キエーボに次ぐ大きい街、地理関係、物流共に組織として活動するには申し分ない条件と言えるだろう」
「民衆の不安を取り除くのも、救済活動となるでしょう。しばし、ハガンカに滞在し革命軍の動向を探る事にします」
「すまぬなユタカ……では、私が持つ情報を開示しよう。また世話になる」
「お任せください」
ビットマン氏は、この時点で複数の封書や書類の写し、及び情報屋の詳細を記したメモを豊に渡して、しばし沈黙。この緊張が、ビットマン氏の歩いたリスクの高さを物語っている。豊は複数の書類に目を通し、彼の意図を察して頭を下げた。
その場における二人の張り詰めた空気を変えたのはアンリエットであった。
「ユタカ〜ッ!!」
「ゴフォ⁉」
アンリエットの愛情表現でもある回転体当たりを、椅子に座った状態でまともに受け止めた豊。大丈夫致命傷だ。
「お、お嬢様……あいも変わらず鋭いタックルですぞ……」
まるで大きな犬の様に豊にじゃれつくアンリエット。厳しいビットマン氏もコレにはさすがにお冠かと思いきや――
「アンリエットぉ〜! パパにはそれ、やらないじゃないかぁ〜! ユタカばかりズルいぞ〜!!」
ビットマン氏が彼女を抱き上げ、頬擦りをすると、
キャッキャと嬉しそうにはしゃぐ。
アンリエットは人の心が分かる賢い娘であった。この行動も恐らくは空気を察しての事だろう。子供の無邪気さが疲れた二人を少しだけ癒していく
明日から豊は、ハガンカを散策する。




