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フォルトゥナ戦記~キモオタだって異世界でモテたい!~  作者: メアー
ギルダム王国式典 前編
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88. 本来の目的


 パピロスの兄弟に対し、マジカルクレイを使用した修行を導入したのには、先に説明した理由の他にもまだある。


「こちらが僕が開発した魔導変異板印刷機です」


魔導変異板印刷機まどうへんいばんいんさつき


 活版印刷という技術がある。金属や木に文字を彫り込み、判子状にしたものを並べて文章にし、それに塗料を塗って版画の様に印刷するものだが、文字を作る際に必要な判子の数や、管理の難しさ、劣化や、最新印刷技術の登場を理由に、

現代ではあまり使われていない。


 この魔導変異板印刷機は、判子の役割をする部分が、全てマジカルクレイで作られている。紙の寸法に合わせて調整板を動かし、文章の形に変化させたマジカルクレイの板に塗料を塗る。この際、板の溝から余分な塗料が流れ落ちるので、余分に塗料が染みたりする心配はない。


 あとは紙を固定した台をスライドさせ、ギアと連動したレバーを下ろすと台が下されると、マジカルクレイの板に記した文章が印刷されるという仕組みだ。


 利点としては判子をいちいち入れ替える必要がなく管理がいらないこと、マジカルクレイ版を平らに戻せば後処理も楽になるという寸法である。


 ただ、コレを扱えるのは魔力操作が優秀な魔術師にしかいないという弱点があるが

エドワルドとアルフレッドのふたりならば、それが可能であった。


 豊が作ろうとしているもの、それは【フォルトゥナ教の簡易聖書】である。

聖書と言っても内容は、フォルトゥナ教団の在り方や倫理や道徳を記すものである。心の弱さに付け込む宗教というのは、利用しやすく、されやすいもので、教養が無ければすぐに、ずる賢い者の餌食にされ、ルールを設ければ極端な読解により、異常者を複数生み出す可能性も孕んでいる。


「もう、そういう輩が現れたら、遠慮なく罰を与えよう」


 現実ならともかく、魔術が成立する世界ならば可能だ。聖書の最初と最後に、

『如何なる場合であろうと、本文の真意を曲解し、有益無益に関わらず私利私欲、または他者の為に利用を試みた者、又は利用させようと試みた者には裁きの雷が下る』と、【誓約と制約】による魔術契約式を加え、もし利用したり、第三者に利用させれば、全ての因果を経由して対象者に対し、瀕死になるレベル雷が直撃する。


 つまり、聖書を使い、豊に魔力的損失を与える為、わざと第三者を使ってルールを破らせるような行いが不可能となるのだ。例え、命を懸けて自爆をしたとしても、自爆させようとした根幹の者にも場所と時間を問わず、雷は降り注ぐ。


 何故この滅茶苦茶な契約魔術が成立するのかというと、雷を放った時の魔力コストの半分を、その数を問わず、全て豊が請け負うというとんでもない代償が付いているからだ。もう半分は聖書を悪用した者へ強制的に請け負ってもらう。仮に一万人以上が一気にルールを破れば、豊にも相当のダメージが来る。


 相手の同意を得ずに発動する強制の制約は、契約者の魔力を膨大な量奪う。こんな事は常人であれば絶対にやらない。損益のバランスが壊滅しているからだ。


 こういった保険をかけておくことで、識字率の低い土地へ赴き、フォルトゥナ教を騙る様な真似は不可能となった。


 聖書の普及により、望める効果は主に【道徳心の確立】にある。人としてやってはいけない事。いわゆる【戒め】が大きな目的であり、心の拠り所を作り、人々の不安やストレスを緩和することも視野に入れている。


 更には、植物紙の普及にも一躍買っている。もちろん現在存在している羊皮紙の組合とも足並みを揃え、【正式な契約の際には羊皮紙を扱う】など落としどころも確立させた。需要の争奪を未然に防ぎ、経済に混乱を齎さない為の処置だ。


 もっと言えばこの聖書を持ち、信仰心に目覚めれば、フォルトゥナがこの世界に齎す影響力が増えるため、その力を豊へと還元する狙いもあり、ターキーもびっくりな一石三鳥な計画なのである。


 こうしてフォルトゥナ教簡易聖書は出来上がった。


その数、十万冊。


《《十万冊作った》》。


 一体どうやったのかというと、まず一冊分の聖書の原稿を作る。

製本をする際に【時を駆ける創造】で完成させると、

スキル効果により五冊になる。


 本来であれば、セットを作り、倍々的に魔力で増やしていくのだが、今回はパピロス兄弟という強い味方がいる。彼らが補助として、技能スキル【錬成の釜】を使用してくれたおかげで、魔力消耗の最小化と、完成品の数が百倍にまで跳ね上がった。更に、今回の印刷作業は魔力の最大値を引き上げる為の訓練となって、最大値の成長を促したのである。


 コレを式典の際に王都中に配る予定だ。一応、増やす前にエウロ王にも中身を確認してもらい、宗教国家にするつもりも、改宗を促す意図もないことを説明しておいた。エウロ王は、その聖書本文のの明快さと、仕上がりの薄さに感動し、これを機に改宗しようかと冗談まで飛び出した。


 豊は、聖書作りに関して全面的に協力してくれた、エドワルドとアルフレッドのふたりに改めて感謝をした。二人は式典を見ていくとの事で、今回の謝礼として一人銀貨二百枚を渡し、式典までの宿の手配を行なった。


 しばらくの路銀は確保できた上に、宿まで用意してもらうのは気が引けると二人は言ったが、正当な報酬だと豊に強く言われ受け取った。


 仕事には責任と報酬が伴わなければならない、これは豊の信条であった。


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