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フォルトゥナ戦記~キモオタだって異世界でモテたい!~  作者: メアー
ギルダム王国式典 前編
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85. 印刷技術と優れた紙




 豊はなんとかして、多くの人々に知識や情報を知らせる工夫が出来ないかと

日々頭を悩ませていた。


 今まで本や印刷物は【時を駆ける創造】を使って執筆製本を行なってきた。


 現在ギルダムには、羊皮紙を始めとした、皮紙を作る職人の工房がいくつか存在してはいるが、大規模に量産されている訳ではない為、未だ多くの民にとっては身近な存在というものではない。精々、誕生日に子供への贈り物として選ばれる水準の高級品という認識が一般的であろう。


 豊のいた世界で新聞が出来たのが、十七世紀あたりで良質紙が作られ

印刷技術が発展を遂げたのは十九世紀以降とされている。


 今ある世界の技術で実現させるには、到底不可能にも思えた。

しかし、ここはファンタジーな魔術という概念が存在する世界である。科学とは異なる発展を遂げたこの世界にも、何かしらの方法があるに違いない。そう豊は考えた。


「お前は紙の魔術師や、印刷の魔術師がいると思うのか?」

仕事をしているマリーゴールドを訪ねた豊は、希望を一蹴されていた。


「第一、お前の様に魔力で物体を作ったりする魔術自体、異質な存在なんだから、そんなのがそこら辺に居たら、経済産業は革命を起こし、大変な事になるぞ」


 以前、衛生面と人口爆発対策として、早期に避妊具を作る工場を力技で作ったが、機械を豊が最初から作り上げた。興味本位で知り合いのコンドーム工場を訪れ、職業体験とちょっとした研修を行った事があった事と、たまたまシリコーンに似た性質の木が存在したから実現出来た事である。


「それとロシィの【マジカルバックパック】だって恐らく、世界初の空間操作系技能(スキル)だ。少なくとも過去の文献には無いし、【収納】に特化した魔術なんてものは私は聞いた事がない」


「てっきり空間系魔術は、確立しているものだと思ってたけど……」


「いいか、魔力は誰の中にでも存在する要素だが、扱う為の魔術適性がある人間は、全体で五パーセントも居ないんだ。あったところで気が付かず、才能を開花させる事が出来ない奴だっている」


「僕が訪れたギルダムの各地域には、ロシィを含めて結構魔術適性者はチラホラ居たけどなぁ……」


「まさか、そんなホイホイと見つかる様なら…………ロシィ、お前の両親に魔術適性はあるか?」


「ないよ〜。使えるのはロシィだけ」


「…………ユタカ、確かお前、最初にロシィを奴隷商人から買う時、荷物持ちにするつもりと説明して買ったと言っていたな?」


「理由がないと、奴隷商人に怪しまれると思って」


「他の適性者と接触した時は、どんな状況だった?」


「キエーボにいたスラムの子達には、強く生きてほしいと思って魔術ギルドに預けたんだ。村支援の時に一緒に届いた手紙の中には皆、それぞれ、戦闘に役立つ魔術が開花したと書いてあったな……」


「もしかすると……」

 マリーゴールドは一旦手を止め、メモに何かを書き出していた。


「あくまで仮説だか……ユタカの修得している魔術は、全てユタカが経験した事柄がもとになっているよな?」


「そうだな」


「周囲が、ユタカのその特異体質に影響を受けて、魔術を開花させたとは思わないか? 魔術を扱う為には、私や先代の様に、術式を新たに構築するか、魔術師が執筆した魔術書で学ぶか、実際目で見て開花させるしかない。それと同じ様な要素が、ユタカにあるのだとすれば、少なくともロシィのマジカルバックパックは一応の説明が付く」


「上手くいけば、紙の魔術や印刷技術の魔術使いが開花する可能性があるかもしれない。という事ですかな……?」


「今の時代、そんな魔術だと戦えないだろうが、産業ではめちゃくちゃ需要が有るだろうな。新たな時代が幕を開けるかもしれない」


「マリー。今ギルダムで経済的に危うい所わかる?」


「金の魔術師殿は大変お忙しい身ですので、王政経済大臣であるこの私がご説明致しましょう‼」


 突如として、王政経済大臣のバルベロンが現れた!


 大臣はマリーゴールドに仕事を追加すると、豊とロシィを連れ、大臣室へと向かった。


「休憩は程々にしていただかないと、金の魔術師殿の業務が疎かになりますので、今後はお控え下さると助かります」


「はい。気をつけます……」


「それでは、先程ユタカ殿が申していた、経済的に危うい所についてですが……ズバリ、ここ王都より少しばかり南東にあります、パピロスという村が現在危機に陥っております」


 大臣の話を聞くところによると、パピロスは栽培されたサトウキビから砂糖を作ることを商売にしている土地であるが、近年各国、各地の、度を越した奴隷雇用による大掛かりな大量生産が図られ、輸送、関税などのコスト面から、各地域ごとに購入が再検討され、年々、その村の砂糖は価値が下がってきているという。


 砂糖の価値自体はそれ程落ちやすいものではないとされるが、扱う商会の行動範囲、需要と輸送量を天秤にかけた際、他の国が大量に作った砂糖の方が、コストが低いという現実がある。需要自体はある為、値崩れを承知で売る事も不可能ではないが、それでは生産者の生活は成り立たない。


 今は、砂糖の質で値崩れを防ぎ、勝負をしているが、それもじわじわと詰められている。いずれ他の国による大量生産が安定すれば、パピロス産の砂糖は価値を失ってしまう事だろう。


 この世界は慢性的な食料不足に対応する為、食料の生産、及び販売の独占が禁止されている。もちろん品種改良によりブランド化されている種を、許可なく国外に持ち出したりすることは禁じられている。


 代々砂糖一筋でやってきたその地には、他に産業になるものがなく、このままでは経営が縮小し、成り立たなくなってしまう恐れもあった。


 豊に付き添い、王政大臣バルベロンも、パピロスの村を視察という程で訪れる事となった。今回のメンバーは豊、ロシィとルル、王政大臣バルベロンとなる。大臣は自身を守る術を持っていると豪語し、護衛をつけることはなかった。


 大臣は初めて乗る魔装車に感激し、国で生産する事を提案したが、豊が一台作るコストを掲示すると、現実的な観点から、永久的に見送る事を決定した。

国が八回くらい滅びる額である。


 村へは魔装車により、数時間で到着した。バルベロンの案内で、村の中を視察した後、村の代表と話をする事になった。


 豊が提案したのは、砂糖を取り出した後のサトウキビの繊維からパルプを作り

そこから更に紙を作る方法であった。


 この地域ではまだサトウキビからパルプを作る技術が発明されておらず、生業にしている所はない。搾りカスは現状、燃料にするか堆肥の材料にするかなどしているが、かなりの量が廃棄という形で捨てられている。輸送の面で足が出てしまい、例え作っても利益にならないからである。


 豊としては、折角サトウキビがあるのならば、無駄なく利用したいと思った。

まずは村の中に、魔術適性のある若い人材が居ないかを調べる事になった。


 村の代表にお願いして、女子供を含めた村中の人を集めてもらい、豊が魔術適性の有無を鑑定していく。折角なのでと炊き出しを行い、人々の体調改善を図りながら

順番に手渡しをしていくついでに、鑑定を進めていく。


 パシリカへと渡る際、海上で行ったマリーゴールドとの特訓として、魔力適性感知を学んでいたので、豊はすでに人に直接触れるだけで、その人の隠された能力が分かるようになっていた。


 一人一人順番に手渡しで鑑定していくが、なかなか適性感知には引っかからない。最後にやってきた二人の男の子の手に触れると、僅かに適性感知が働いた。


村の代表にこの二人の話を聞くと、昨年に病で両親を亡くし、現在は祖母と三人で暮らしているとのことであった。祖母は寝たきりで働けず、二人は幼いながらも、砂糖作りの手伝いをして、たくましく生活しているらしい。


 豊達は炊き出しを終えて、その三人が住む家へと向かった。


「あれ? さっき炊き出ししてた、なんとか教団の兄ちゃん達じゃん、何の用?」

「フォルトゥナ教団の炊き出し、美味しかったです。ありがとう」

先程の兄弟が出迎えてくれた。


「村の代表に君達のお婆様が寝たきりと聞いてね、僕達の治癒術で治せないかとやってきたんだ」


「ホント⁉ ばあちゃんは奥の部屋だよ! 早くみてあげて!!」


 家の中は所々汚れていたり傷んでいた。寝たきりの祖母と子供二人では、なかなか手がつけられないのだろうと察し、奥の部屋へと向かう。


「おや、私にお客さんかね……どれ、エドワルド、アルフレッド。起きるのを手伝っておくれ……」


孫の二人に手伝ってもらいながら老婆は上体を起こす。


 豊は自己紹介と、自分たちがフォルトゥナ教団として各地を訪れ、救済活動を行なっている事と、その一環で老婆を治療しに来たという都度を説明した。


「有難い事です……本当に有難い……」


 豊は診察を行い、ロシィに老婆の身体を拭いてあげるようにと指示を出し、

外に出て料理を作っていた。


「兄ちゃん、ばあちゃんは体が弱っているからスープくらいしか飲めないぜ。さっきも炊き出しの粥を薄くしてから飲ませたんだ」


「そうだと思ったよ、だからちょっと工夫してみようと思うんだ」


「おばあちゃん元気になるかな?」


「なんとかするよ、僕を信じてとりあえず部屋の掃除をしてもらおうかな」


掃除道具一式を取り出し、兄弟に指示を出す。


 まずは鍋でカオリダケからダシを取り、鶏をまるまる一匹下拵え、中身を全て取り出して内臓以外を調理をし、外側においし草で作った調味料にニンニクと少々の香辛料を擦り込む。香草と薬草類を刻んで鶏の中に仕込んで腹を綴じ、表面をフライパンでローストしてから出た油と一緒にダシを取った鍋の中へ


 過剰なる糧からサブメニューで取り出した生米を洗って、これも鍋の中へ

蓋をしたらゆっくりと煮ていく。仕上げにルルと作った疲労回復のポーションを適量垂らして――


【丸鶏の薬膳粥】が完成した。

鳥とダシの旨味が米に吸収されていて、肉は匙で掬うとホロリと蕩ける

スープは薬草の効果で内臓の働きを改善する。


 家の中が片付いたところで、老婆に薬膳粥を持っていく

兄のエドワルドが慣れた手つきで粥を老婆に食べさせると――


老婆の身体から光が迸る

「んまぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜い!」

エドワルドから皿を受け取り

自ら粥を口に運ぶ老婆の姿に、兄弟は唖然としていた。


 老婆は肝機能が著しく低下しており

それを豊は肌と眼球の色から察していた。


 肝機能を助け改善させる為に解毒作用のある香草と薬草

アリシンが含まれるニンニクを使った。


称号【炎の料理人】により、料理の効果は高められ

【超即効性】が付与され、ポーションにより効果が増し

老婆は力を取り戻す。この際、注意をしたのは料理の効果によって、

能力値ステータスにおけるVIT(vitality)に対し、上げ過ぎてしまわない様調整をしたことだ。これらの値は肉体の頑強さに直接作用する。


 この世界の人間は老化によって能力値ステータスに対し、永続的に弱体効果が付与される。これを料理によって打ち消し、数値を上げ過ぎると、自浄作用が高まり過ぎてしまい、薬効作用そのものを全て打ち消してしまう可能性があったのだ。


 兄弟も薬膳粥を食すと、突如力が漲り、戸惑いを見せる。

老婆は用意した粥を全て食し、豪快な寝息を立て寝入った。


 その間、豊は兄弟に魔術の才能があり、魔術を自分の下で磨き上げ、活かした仕事をしないかと話をした。


 エドワルドとアルフレッドは、魔術と聞き話に飛びついた。なにせ、魔術師は狭き門であり、才能と努力を必要とする。もし、能力が目覚ましい効果を出せば、一生この先喰いっぱぐれることは無い。


 豊はしばらくの間、この二人を魔術師として鍛える事にした。


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