78. 紅の救世主
ルーティーン家を後にし、ギルダム城へと向かう一行。
王都までの道程は遠く、魔装車でもかなりの時間が掛かった。
途中、リカンナがいる村に立ち寄ったり、ゲッゲーロの様子を伺いに行ったり、キエーボに顔を出したりしながら、五日程かけて王都へと到着した。
城門をマリーゴールドの顔パスで通過し、一番豪華な宿をとって魔装車を預け、町へと繰り出す。
王都なだけあって、ここギルダムは人々の活気にあふれていた。必要雑貨に武器防具、仕立て屋服屋に各ギルドと賑わいを見せている。王国一の発展を遂げる一方で、必ず見える深い影。
強固な城壁の外の更に外には、キエーボの時は比較にならない規模の貧民下層が存在し、人々の瞳に光はない。
いつもの様に、雑貨と食料を買い込み炊き出しと支援を行う。全ての住民が利用できる簡易な公衆浴場を作り、次々と民衆を洗い新しい衣服を渡していく。
助けを必要とする人々の数はゆうに二千人を超えていたが、全員にいきわたる様に、備蓄していた分をすべて出した。
その間、豊は炊き出しを作り、次々と人々の腹を満たしていく。
【時を駆ける創造】の熟練度は上がり、一度に作れる料理の調整が可能になっていた。
料理を食べられない程弱った者には、作り貯めしておいたポーションを使い、治療を施す。
以前にキエーボで経験したスラム改善を活かし、何事もなく貧民下層の状況は改善されていく。体力が改善し、能力値が底上げされた人々は、一斉にして下層の清掃を開始。道具も全て豊が用意した。
豊が支援活動を行う間、マリーゴールドは先に城へ赴き、フォルトゥナ教団による支援活動が行われている事を報告。手の空いている人材を派遣する様にと、直接王に進言していた。
二日かけて貧民下層は清潔になり、ネズミ一匹通さなくなった。後は自給自足の為の畑、狩猟の方法、教育、人材の発掘からレベルの手配、仕事の斡旋を行い、兵の力も借りて家屋の修復などを行い改善を図る。
ギルドから教師に適した人材を長期金で雇い、学び舎を用意して必要な本や筆記用具まで作った。
上下水道を新たに構築し、水場や便所なども早々と設置する事で、一週間もしないうちに貧民下層とは呼べない程、人々の暮らしは安定し、その目には人本来の有るべき輝きが戻っている。
フォルトゥナ教団に感謝をし、入信、及び入団を申し込む者は多数居たが、豊はこう返す。
「私はフォルトゥナ教団に入ってもらう為、ましてや我が神を信仰をしてもらう為に皆を助けたのではありません。皆には教団として働いてもらうよりも先に、自分達の未来を見据えて、日々を懸命に生きて頂きたいと考えています。我がフォルトゥナ教団は見返りを求めません、ですがあなた方がもし、困っている人を見かけたら同じ様に見返りを求めず、みんなで助けてあげてください、そんな優しい世界を実現させるのが、私の望みであり、我がフォルトゥナ神の願いであります」
一点の曇りもなく演説をした豊は、民衆の尊敬と信頼を一身に受け、それは新たなる力の発現を許した。
【称号、紅の救世主が授けられました】
レベルカードからの通知により称号取得が明らかになった。
【紅の救世主】
世界の指導者に与えられた称号
人々の信頼と尊敬を集めるに至る
適性を持つ者にのみ与えられ、各、能力値を底上げし
レベルアップ時の追加賞与取得も上昇
行動による様々な奇跡が対象者に訪れる。
演説を終え、宿に帰るとマリーゴールドが二人を待っていた。
「お疲れさん、そろそろ支援活動も終わる頃だと思って、王への謁見を取り付けてきた。二日後の昼からだそうだ」
「ごしゅじんさま、しっかりと休んでくださいね」
「うわぁん疲れたよぉぉんロシィ! 甘やかして! 僕頑張ったでしょ!」
「ごしゅじんさまはいい子だね〜がんばりやさんだね〜よしよし〜」
「うわぁ〜ん! 美少女にモテモテになってハーレムしたいよぉ〜! 赤ちゃんになりたい〜!」
「ここ最近の激務で、ユタカにも限界にきたか……無理もない……それにしてもひどい有様だが……これが英雄の姿か……?」
マリーゴールドの予想はその斜め上を行く形で姿を現した。肉体と魂が限界を迎える事は無かったが、度重なるストレスで精神が先にやられた。
「激務続きでキャラクターイメージが壊れそうよ! 壊れるぅ! 壊れちゃうぅ!! んほぉぉぉっっ!!」
「その口調やめろよ。気持ち悪りぃ」
たまに見せる人間らしさが、時折、豊が普通の人間である事を思い出させる。
ロシィとマリーゴールドは豊の弱さを知って
『私が彼を守らないと』という気持ちになっていた。
明日は仕事を休んで、みんなで町へ繰り出す。




