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フォルトゥナ戦記~キモオタだって異世界でモテたい!~  作者: メアー
ギルダム王国式典 前編
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76. アップルパイの日

四章始まります。



 魔装艦の速度は更に向上していた。


 今までは魔装車の動力だけで動かしていたが、マリーゴールドが更に手を加えていたのである。


 以前、ダンジョン三十階層のモンスターハウスで手に入れた。

【グレートパラケラテリウム】


 バレル鉱山火山地帯で倒した炎剛竜。

【マグマディアマントス】


 豊が、養蜂に心血を注いでいた時間、彼女は、ふたつの心臓を魔導力源と、魔導エンジンへと変換していた。それらを今回、魔装艦自体にも搭載したのである。

 更には休暇の間に、スクリュープロペラの増築と改造を施していた様である。


 球状船首を実装して、波を立てない様にし、魔装艦は40ノット。時速およそ74km

駆逐艦である、島風程の速度が出る様になる。これ以上の速度を出すと、波に放り出された場合、魔装艦の船体が壊れる恐れがある為、速度は抑えられている。


 途中、海上にてクラリィクと挨拶を交わし、あれから異常がないか報告を受ける。


クラリィク曰く、何隻か不審な艦を海の底に沈めた。とのこと

「お役立ちケロ!」

ルルはここぞとばかりに活躍した。


 そんなこんなで海を渡り、予定よりも早く、

ギルダム王国の港町、リパランスへと到着した。


 ボルリッチ家の船舶場に魔装艦を預け、

造船技術者、アニスにメンテナンスを任せる。


金の魔術師の名でリパランスから、各方面にフォルトゥナ教団について


 マリーゴールド・タッチアップルの名の下に、教団を彼女の監視下に置き、何者もそれを害してはいけないという内容の書状が送られる。


 世界に名を轟かせるビックハット八代目にして、金の魔術師の称号を持つ天才魔術師の言葉を無下にすればどうなるか、各地の大貴族や王族は知っている。


 余程の怖いもの知らずか、奇想天外なバカでない限り、彼女には逆らう者は存在しない。


「ユタカが実際襲われるまでその重要性を忘れていたが、初めからこうしとけば良かったぜ。先に書状は送ったが、ギルダム王には私が直接話をつけるとしよう」


「いつもすまないねぇ……マリーさんや……ワシが不甲斐ないばかりに」


「やだねぇ、それは言わない約束でしょ……って! 何やらせんだバカタレ!!」

マリーゴールドからノリ突っ込みローキックの洗礼

「おうぅん! 痛いっ!!」


「ごしゅじんさま大丈夫?」


「ロシィ〜! マリーちゃんが僕のケツに激しいツッコミを〜!」


「いたいのいたいのとんでけ〜♥(ヒール)」


「あぁ~これこれ♥」


「やめんかお前らぁ‼」


「三人とも、いよいよ漫才に磨きがかかって来ていますね……」


「なかよしでなによりケロ」



 豊たちは救いの村へ立ち寄り、状況を把握する。

移民により、村の人口は増えていたが、まだまだ余裕がある様だった。


 衛生管理の改善も日の目を浴び、病気も未然に防ぎ、食料の供給及び、農業も安定。葡萄も収穫されワインも作られたという。二日ほど滞在して、改善点の指示や足りない物資の補充、本や、おもちゃなど、娯楽物の追加などを行う。


 久しぶりに豊が料理を振る舞うと知ると、たくさんの人々が集まった。村人も訪れていた商人も旅人も関係なく料理を振る舞う為、総出で料理をする。


 村にいる老若男女問わず、料理を通して、共同作業から交流の大切さを改めて認識してもらい、何気ない会話から大切な事まで、会話をする大切さを知ってほしいというのが豊の魂胆だ。


――――――――――――――――


滞在中の話だが


 新たに弟が産まれ、お兄ちゃんになった子が、弟ばかり構う両親に対し、心の距離を感じていたひとつの家庭があった。


 豊は兄になった子に対して、自分の気持ちを正直に話す勇気を説いた。恥ずかしい事ではない、兄であろうと子なのだから甘えたっていいんだ。豊はその子の手を握り、両親と話す間ずっと勇気を与え続けた。両親は我が子からの告白に、自分達の過ちとすれ違いに気が付き、話し合いの大切さを理解した。




 ある女の子は家の皿を割り、大好きな母親に叱られた。女の子は初めて見る母親の剣幕に驚き、謝る事も出来ず逃げ出してしまう。急いで家を飛び出したが為に、皿を割った時の傷も、母親には言えずにいた。


 それをたまたま見つけたロシィがヒールを施すと、皿で付いた傷は消えたが、

心には見えない傷が残った。優しい母親が、あれ程心を乱し、強く叱るという事から、自分は、割ってしまった皿よりも価値がないものだと思い込み、ふさぎ込んだ。


 ロシィから事情を知った豊は、母親を尋ねて話を聞く。皿は亡くなった母親の形見だったそうで、つい感情的に叱ってしまったと後悔していた。

 豊は皿を魔術で直すと、女の子を連れて来た。ロシィに手を握ってもらい、女の子は皿を割った事を謝った。母親も感情的に叱った事を反省し、心から謝った。


 豊により皿は直ったが、母親は皿よりも大切な我が子に、深い傷を残した事を反省し、【皿よりもあなたが大事なんだ】と直接言葉で伝えた。


 女の子は安心したせいか、泣き出してしまったが、母親はその子が泣き止むまで抱きしめ続け、豊達はその場を去った。


 世の中には、言葉にしなければ分からない事がたくさんある、時には勇気を出して、相手に一歩踏み込むのも大事だと豊は伝えたかった。


――――――――――――――――



話は戻って


 その後、村に居た全ての者に対し、豊から直接、今から起こり得る脅威や、自身に起こった事を話した。彼らには、不確かな情報に踊らされず、軽率な行動や発言をしない様にと伝えた。


 一度振るった暴力は連鎖を起こし、終わりのない不幸を生み続ける。例え、自分達が気をつけても、相手が同じ様に賢いとは限らない。


 仕返しをするなとは言わないが、自ら視野を狭めて主語を大きくし、多くの人を巻き込み、自らを正当化しようとする人間になってはいけない。浅ましい人間になってはならない。知性と秩序を無くせば、それは獣だ。人に害を成せば、それは魔物だ。


 彼の言葉に、その場にいる誰もが耳を傾けていた。誰もが皆、争いたくて戦う訳ではない。守るものがある故に、戦わねばならないだけなのだ。


 話を終えた頃、みんなで用意した特製のアップルパイが焼けた。初めて経験する新しい味に、皆喜びを露わにして笑いあった。


 これは記憶の関連付けと呼ばれる方法で、楽しい事嬉しい事良かった事と憶えさせたい事柄を、前後または同時に行う事で、人々に深く印象付けが可能となる。


 皆は今日の事を【アップルパイの日】として記憶に残す事だろう。これから辛い事が起こるかもしれない。そんな不安も、今日という日を胸に、強く生きていく。そんな願いが、このアップルパイには込められている。




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