68. バレル鉱山
ドワーフが住む村があるバレル鉱山は、活火山であり、良質な鉱石が発掘される。それを大勢の職人が武器や防具、装飾品や道具などに加工する事で、村の生計は成り立っている。
今日もたくさんの商人が、買い付けと物資の販売の為に行き交っており、村には活気が溢れている様に見える。
道行く人に尋ねてまわり ドワーフ村の代表に会いに行くと、
技能を司る神、トートについて話を聞く事が出来た。
古よりトートは物作りの神としても崇められ、努力を惜しまず、向上心を持って物作りに励む事により、認められたドワーフには、【恩恵】と呼ばれる神の技能を賜る事が出来るという伝説が伝えられていた。
【恩恵】を賜ったドワーフの作る武具や道具には、神の力が宿ると言われ、性能向上、丈夫で長持ち、使用者の力を引き出すとまで言われていた。
この村で神に認められたのは先代の代表と、村きっての鍛治職人であるドワーフ、ゴードンのみである。
トート神に認められるには、バレル《《火山》》の奥深くに存在する祭壇へ最高の作品を捧げなければならないが、滅多な事では認められないという。
「なんで祭壇に行ったらダメなんだよ‼」
家の外から大きな声が聞こえ、ドワーフの青年が駆け込んできた。
「代表! おれを祭壇に行かせてくれ! 最高のハンマーが出来たんだ! コレを捧げればきっとトート様は恩恵を授けてくれる! 且つてない程に自信があるんだ!」
「ゴダ! お客さんの前でワシに恥をかかせるつもりか! 今すぐに帰ってゴードンの手伝いをしなさい‼」
「あの親父が珍しく褒めてくれたんだ! この【撃鉄】は! とにかく見てくれよ‼」
「すみません旅のお方、少しお時間を取らせていただきます」
ドワーフ代表は豊達に謝罪をし、ゴダの作った戦鎚を手に取る。滑らかな表面に無骨な造形片面は、平たいヘッド造り。もう片方は鋭い先切り造となっている。その密度と重厚感、迫力に、豊とマリー、ギャリオンが関心を示した。
「これは良い魔鉱鋼ですね。適度な密度で調和されていて耐久性、破壊力共に期待が持てそうですぞ」
豊達のリアクションに対し、ゴダは表情を崩して喜びを表に出す。
「お客人、魔鉱鋼の良し悪しがわかるなんて大した目利きじゃねぇか!」
と満足げであった。過去、ダルタニアスの業物を多く見ていた事もあって
魔鉱鋼への慧眼は鍛えられていたのだ。
代表は、撃鉄の隅から隅までを丁寧に鑑定し結論を出した。
「確かに良い出来だ、全盛期のお前の父、ゴードンにも迫る勢いと言っても差し支えないだろうな」
「代表……! それなら……!」
「しかし、今は祭壇には行かせられない。まぁ話を聞け、ワシは別にイジワルで言っておるのではなくてな、まだ一部の関係者にしか伝えておらぬが……」
代表が話題にしたのは、最近祭壇に巣食った魔物の存在であった。超硬度の皮膚で全身を覆い、口からは高熱の炎を吐き出す灼熱の脅威。
それは祭壇の管理をしているドワーフ達に突如襲いかかったという。命辛々逃げ出したものの、重傷者が出てしまい、祭壇への道は立ち入り禁止となった。
「討伐隊は派遣したのですか?」
代表は豊の問いに答える。
「祭壇の管理をしていたのは屈強な男たちばかりであった、不意を突かれたとはいえ其奴らが手も足も出せずに逃げ帰ってきたのだ……。幸い、祭壇と鉱山への道は別れている故、我々の産業自体には支障がない……。今は強力な討伐隊を組む為の資金を集めている段階だが、いつ奴が暴れ出すかはわからん……。今は耐える時だ、理解してくれゴダよ」
事情を知り、口を紡ぐゴダであったが、その悔しさは他人からも見てとれた。
「私たちも祭壇に用があるのですが、魔物の討伐を任せては頂けないでしょうか?」
豊の提案に代表とゴダは驚きを露わにする。子供を連れた冒険者が、屈強なドワーフ達を蹴散らした魔物相手に、討伐を申し出るとは想像もしていなかったのだろう。
豊達が素性を明かすと、代表は納得がいった様であった。異国の地でのフォルトゥナ教団の知名度はともかくとして、金の魔術師と黒鉄の竜巻の話題はこの大陸においても広く噂になっていた。代表は皆の佇まいを改めると、幾度も戦いを潜り抜けた強者独特の気を察した。
「情けない話ではございますが、どうかあなた方の力をお貸しください……」
代表と魔物討伐の話をつけ、豊達は祭壇への道を進む事となる。




