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63. さらなる深みへ



 鎧大将を打ち倒し、豊達は一旦、

休憩所へと戻り体力の回復と食事を図っていた。


「早くしろよユタカ! 私は腹減って仕方ないぜ……ステーキ丼で頼むな!」


 各々が、豊に食べたいメニューを注文し、

【過剰なる糧】から料理を作り出す。

その間、ロシィが下敷きを取り出し、ギャリオンが準備を整え、

マリーゴールドが行儀よくしていた。


それぞれの料理が揃うとみんな揃って

「「いただきます!」」


 通常ダンジョン内では、到底味わう事が出来ない様な食事を楽しむ一行は、

食事を進めながら、各自己のレベルアップを確認し、

技能スキル補正値ボーナスを振り分けながら、

次のレベルアップを計画する。


「むぐっ……十一階層以降は、休憩所が二階層毎になる。レベルを上げるなら、偶数階層で行うのが堅実だろうな。だが、この先十三階層に、倒し難いが経験値効率の高い魔物が存在する」


「モグモグ……異様に素早い、金属製スライムか何かですかね?」


「合金ポプリンと呼ばれる個体だ。よくわかったな」


「冗談だったのにマジか……もしかして、聖水が弱点で当てたら倒せるとか?」


「なんでそんなに詳しいんだユタカ? 聖水の確保が難しいから、実用的ではないが、転移扉を持つ我々なら、効率化は可能だろう」


「ムグッ……じゃあマリーさんは、相当ソイツでレベル上げたんですか?」

ギャリオンの素朴な疑問にマリーゴールドは言葉を詰まらせる。


「マリーちゃんどうしたケロ?」

「大丈夫?お茶飲む?」


「残念ながら、私一人ではアレを狩れないんだ……何しろ、動きが早すぎてな……」

遠い目をする彼女に、これ以上追求するのはやめる事にした。


 食事を終えて陣形と作戦を話し合った後、裏道を通って安全に十三階層へと降りた一行は、早速遠目に第一被害者を発見する。


まずは広く展開して、対象を壁際に追い詰めてからタコ殴りにする作戦をとった。


【合金ポプリン】

ポプリンと呼ばれる、軟体生物が貴金属を身体に取り込んだ事で変異した魔物。

肉体の変化によって、その行動にも変化が出たのか、やや好戦的であるが、勝ち目が無いと理解すると、恐ろしい速さで撤退する狡猾さを持ち合わせている。

体内に金属の魔力を貯め込んでいる為、倒すと経験値が手に入りやすい。


 一体目は、奇襲が上手くいった。効率を考えて、先にパーティ内で物理的な腕力のあるギャリオンのレベルを底上げし、それからレベルリンクを発動させて、圧倒的な物理で合金狩りを行う事になった。


 合金ポプリンは想像以上に素早い上に、かなりの耐久力を誇っていた。単体で出現するわけではないので、他の魔物の処理なども含めて、一時間に一体狩れるか狩れないかの難易度であったが、先程の戦いで得た経験値を合わせ、ギャリオンはレベルを二つ上げる事に成功した。能力補正値ボーナスは力の強化へと振り分けてゆく。


「ギャリオン、そろそろコレを渡しておく。マリーゴールド特製!名付けて【擬似魔法剣付与手袋】だ!」


【擬似魔法剣付与手袋】

革で出来た手袋で、甲の部分に金の装飾で魔術回路陣が施されている。

使用者の魔力を読み取り、魔鉱鋼へと伝える事が出来る。


「まだ属性操作は出来ないだろうが、武器での攻撃に魔力を乗せる事で攻撃力の強化に繋がる代物だ」


「マリーさんありがとうございます!」


 マリーゴールドが使い方を説明し、試しに使ってみる事になった。

可哀想な魔物は、魔法剣被害者第一号となり、消滅した。


「手応えが凄いです……まるでバターを切るかの様に、刃が入っていきましたよ……マリーさん凄いです!」


「まだそんなのは序の口だ、後は相手に合わせて、乗せる属性を変更したり魔力である程度形状を変えれたら一人前かな」


「これはレベル上げが捗りそうだな」


再び合金狩りを再開する一行、

効率は上がり、ギャリオンはまたレベルをひとつ上げる。


 現状、ギャリオン以外、合金ポプリンを狩る事が出来ない。合金ポプリンは賢い為、魔物が複数体出現した際などには、ギャリオンを別の魔物に押し付け、自分は隠れたり逃げたりする。それを打破する為、豊はロシィとの合体技コンビネーションを提案した。


「名付けて、【追奏連撃ついそうれんげき】‼ロシィの軽やかな連撃に呼応するかの様に、追撃を加える戦法だ。まぁ、言うなれば剣牙獣戦で使ったやつの応用だよ」


「なるほど、相手を空中に浮かせて動きを封じ、その隙を狙って一撃を与える。と言った戦術ですね」


剣牙獣戦で活躍したギャリオンは、持ち前の高い戦闘センスで、いち早くその意図を理解した。


「言いたい事は解かるが、合金ポプリンを一撃で倒せる程の火力……ユタカの場合なら【怒りの鉄槌】だが、合体攻撃に組み込める程、素早く発動が出来るのか?」


「マリーのその意見はごもっとも。現在【怒りの鉄槌】には二つの種類がある。一つ目は威力だけを重視した元来のスタイル。二つ目は発動を早くして、広範囲に攻撃をするスタイルだが、今回新しく加わる三つ目。威力は半分だが、鉄槌を二つ具現化する【怒りの挟槌きょうつい】だ」


「成る程、それは初見殺しだな。大きな攻撃は、その威力故に二回来るとは想像しにくい」


「【怒りの鉄槌】が二回発動出来れば、剣牙獣の時の様に、三連撃になりますね」


「あぁ、【追奏連撃】はロシィが一回目の攻撃で【回避を誘発させる場合】と、【空中に浮かせた場合】の二つを想定している合体攻撃コンビネーションだ。ハマれば、戦術が大幅に広がる筈だ」


「がんばるぞー! おー!」


この後、幾度かの戦闘を経て、合体攻撃コンビネーションは、再現可能となった。その際に、豊の繰り出した新技【怒りの挟槌】は全員の予想を大きく覆した。



「いい頃合いだから、最後に一匹倒して今日は引き上げるとするか」


 豊の意見に賛成すると、丁度良く合金ポプリンが単体で姿を現わす。

咄嗟のことで陣形が崩れたが、皆で一気にボコボコにしようと追いかけると、行き止まりにぶつかった。合金ポプリンもいよいよ観念したと思った矢先


【ポチッ】


っと、不穏な音がした。

突如、迷宮の地面が大口を開け、豊達を一気に飲み込んだ。

「まずい!落とし穴だ!みんな掴まれ!」


 持っていたロープを各々に渡し、身体に縛り付け皆がはぐれないようにする。

落ちた先は滑り台のようになっており、止まることなく下層へと滑り落ちていく。


 滑り着いた先に光はなく、豊はすかさず【迸る煉獄】で火を起こす。


 光源が出来たことにより、辺りの様子が明らかとなる。

一行が目をやったその先には、無数のモンスターが蠢いていた。

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