58. 魔装車連結式推進艦
そんなこんなで連れて来られた
造船技術者のアニスであったが
豊の持つ唯一無二のスキルである
【時を駆ける創造】を経験して驚いていた。
効果としてはサポートに入った人間自体の作業効率を短縮させ
どんな作業でも1時間以内に収めることが出来る。
実際に手の動く速度が上がっている訳ではないが
想い描いた線を寸分の間違いもなく
一発で引く事ができる為、時間が短縮されるという仕組みであった。
「凄いわ!仕様書から外板展開図、荷役展開図、装置図、舵構造図、据付図、取付図、詳細製作図、小組立要領図、大組立要領図、搭載容量図まで1回も迷わず間違えず滞らずに出来たわ!!」
「ユタカの案で魔装車を搭載させると、動力を繋げてスクリュープロペラという推進装置が回転する仕様も組み込んでおいた、従来の風に頼る船なんかよりめちゃくちゃ早くなるぞ〜!!楽しみだな!!」
「はい!こんな発想私達の家にはありませんでした!凄いです!!」
19世紀の技術を異世界に持ち込んだ豊であったが
彼の魔術無しでは再現不可能な技術なので
技術の漏洩等はあまり考えなかった。
天の声からお知らせを受ける
【時を駆ける創造】の熟練度が上昇し能力のアンロックがされました。
新規の技術者がサポートに追加されたことにより
以下のものが獲得された。
【大型建造】
少ない時間と少ない材料で
大型の建造物を製作出来る。
サポートに技術者が入れば
その技術者が知る限りのあらゆるものが作れる。
丁度良いタイミングで新しい項目が追加され
張り切った3人が試行錯誤をしながら作業をする事2週間
魔装車連結式推進艦が完成した。
豊が魔装車も乗れる船をイメージした際に出来上がったのは
見た目が駆逐艦のゴツイやつ
明らかにこの世界の技術レベルを無視した作りであった。
既に技術レベルは20世紀に入っている。
マリーゴールドが途中から造船が面白くなってしまい
金属を錬金魔術で作り出した辺りからおかしな事になってしまった。
「なんですかねこれ……」
「かっこいいーー!!」
「強そうケロ!」
「まるで戦いに行くみたいだぁ……」
「もしクラリィクが言う事聞かなかったらぶん殴って逃げるしかないな!ハーハッハッハ!」
こうして魔装車連結式推進艦
略して【魔装艦】が完成した
その後船造りの裏で着々と進んでいたリパランス代表と話を付け
自己責任という条件で
クラリィクとの話し合いを承諾。海に出る事が許可された。
金の魔術師とフォルトゥナ教団
喋るカエルを目の当たりにし
実際問題、禁漁期間は仕方ないとしても海を渡りたい旅客船や
貿易船には死活問題だったのでリパランス代表は賭けに出るしかなかった。
「テストも十分に行い準備は整った、あとはクラリィクに直接会うだけだ」
「よぉーし!野郎ども!乗り込めーっ!!」
「「わーい!!」」
「大丈夫かなぁ……」
今回は心配性のギャリオンを除いて
皆海の旅を楽しみにしているようだ
魔装艦は海を滑る様に抜錨した。
リパランス港を出航する事しばらく
ルルはクラリィクに呼び掛けを始めた
「ケロケロケロケロケロケロ……」
「クラリィク、来ますかね、というか話通じますかね……?」
「ルルを信じるしかないだろうなぁ、ダメだったら逃げるしかないし」
「私の魔術は地面があって初めて成立するものばかりだからな、期待するなよ」
「オレも魔術使えないんで、船上戦闘は御免被りたいです……」
呼び掛けを続ける事しばらく
魔装艦に向かってくる一際目立った
水影を発見した、それは海を掻き分け豊達の目の前に姿を合わす
『我を呼ぶのはお前か、小さきものよ』
「ケロケロ!こんにちはクラリィク!わたしはルル!」
『癒し蛙ではないか、雨の森の希少種が何故こんな海にやって来たのだ』
ルルを通訳とし、ここまでの一連の流れを説明した
禁漁期間の延長に伴い意図せず
クラリィクが旅客船や貿易船まで止めてしまっている事により
リパランス全体の経済が危うい事
討伐を仕掛けたのは別の国で我々も迷惑している事
航海におけるクラリィクとの新しい決まり事の提案について話をした
『話はわかった、してその提案とは』
単純な話であるが、旅客船や貿易船には青の旗を掲げるのを義務化し、敵意がなく
漁をする船では無いという意思を示す事であった。
もちろんこの手を使い、密漁をしようとする不逞な輩に関しては
一切の手加減なく滅ぼしてもらうことにした。
人間達が幾ら正しく有ろうとも
一定数は必ず決め事を守らない悪い奴がいるという事を理解し
人間全てが、愚かで浅ましいものばかりではない都度を説明した。
『ふむ、確かに我が一族にも一定数度し難い程の短絡的で話を聞かない阿呆が存在する……これもまた自然の摂理という訳か……あいわかった、禁漁期間はまだ続くが旅客船と貿易船の話はわかった。一応だが、たとえ禁漁期間が終わったとしてもくれぐれも人間には魚達を取りすぎない様にと伝えてくれ、我々の生きる糧がなくなってしまうからな』
クラリィクとの話し合いを終えた一行は一旦リパランスへと戻り
代表や民衆に結果を報告した。
ここでも金の魔術師とフォルトゥナ教団の日頃の行いが報われ
人々は誠実に自体を受け入れた。
リパランスの皆もクラリィクの頭の良さ、事情を知り、理解を示してくれた
水揚げ量の調整を約束し
一旦、漁船以外の船出が許可された。
これ以降クラリィクが船を襲うことは無くなり海には平和が戻った
懲りずに密漁した何処かの国は船を全て沈められもう二度海には現れなかった
クラリィクは賢く強く、相手にするには悪過ぎた
商売にならないと理解すれば二度と過ちは起きないだろう
豊達はようやくパシリカへと渡ることが出来ると喜びリパランスを出発した




