51. 黒鉄の竜巻
負傷した兵士の避難を終わらせ、豊達の助太刀に向かおうとしたギャリオンであったが
重歩兵隊が崩壊寸前との伝令を受け1人カザラキア陣営へと向かった。
他のモンスターは既に片付いていたが
大猿1匹によって形勢は追い詰められていた。
大猿が腕をデタラメに振り回すだけで
傭兵や兵士達がまるで紙切れの様に吹き飛ばされていく。
ギャリオンは駆け出し、渾身の一撃を相手に放つ
彼の重たい一撃が大猿にめり込むと
周りの傭兵達が歓声をあげた。
「きたぞ!黒鉄の竜巻だ!」「頼むぜギャリオン!!」
「俺たちの仇をとってくれぇーーーッ!!」
ギャリオンがゆっくりと魔鋼剣を構えると大猿の様子が変わった。
強敵と認めたのだろう
辺りは緊張感に包まれ、空気は張り詰めていた。
先に手を出したのは大猿
豪腕を振り回しギャリオンに迫る
怒涛の連撃を剣で突き、軌道を変える事で見事に回避していく
大猿が怒りに任せて動作が大きくなったのを見計らい、肩に重い一撃を振り下ろす
それをまたしても野生の勘と身体能力だけで躱し、ふたたび連撃が始まる
先程と違うのはギャリオンの動きが防御から攻撃に変化したこと
強力な一撃一撃に的確なカウンターを入れていくと
次々に体毛は剥ぎ取られ、大猿の皮膚が見えてくる。
カウンターを取られ続けた為か
攻撃の勢いが弱まると、すかさずギャリオンは攻撃を仕掛ける。
打ち落としからの突き上げ
更には地面を蹴り上げて砂による目潰し
泥に塗れた戦場で培った戦闘スタイルは
自然の中に生きる魔獣には効果覿面だった。
あっさりと視界を奪い、好機を得る
踏み込みから始まる滑らかな体重移動と
剣の重量、遠心力を利用した豪快な溜めの回転斬り。それから続く左右の連撃。
その速度はあまりにも早く、最早、人の目で捉える事は出来ない
人には黒い風と轟音だけが認識される。
それが黒鉄の竜巻と呼ばれる所以である、竜巻を止めることは出来ない。
辺り一面に大猿の悲鳴がこだまする
やがてその叫びも黒鉄の竜巻に呑み込まれる。
竜巻が消えると其処には肉も骨も断ち切られバラバラになった大猿だけが残った。
「やったなギャリオン!」
丁度良く現れた豊とマリーゴールド
手当てを終えたロシィとルルが駆け寄ってくる。
「大変でしたがなんとか……」
「ギャリオンちゃん!怪我してる!治してあげるね!」
「ありがとうございます、センパイ」
ロシィとルルのダブルヒールでギャリオンの傷はすぐに治癒した
「一時はどうどうなることかと思ったがなんとかなったな」
「あぁ、奴等が居なかったら俺たちは全滅してたぜ」
傭兵や兵士達が豊達に対しそれぞれの言葉で感謝を示した
そこに走りこんできた兵士が叫ぶ
「た、助けてくれーーーッ!燃えた大猿がまだ!まだ!生きている!!!」




