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48. さらなる救済へ



 村に別れを告げ、向かう先はハガンカ、

ルーティーン家に旅立ちの挨拶をする為である。


「そうか、また寂しくなるな……。ユタカ達の旅路にフォルトゥナ様の祝福があらんことを……」


 ルーティーン家の人々に見送られながら出発する一行。

ビットマン氏からの情報によると、なにやら国内でアリア教団が不審な動きを見せているとの事で、十分気を付けろと通告された。


 それとは別に、最近はカザラキア公国との国境沿いで、魔物が頻繁に出没しており、多くの犠牲者が出ているとの事だった。


 ギルダム王国とカザラキア公国は共同作戦として、魔物掃討作戦を立案。数多くの強者たちが、懸賞金を目当てに続々と集まっているという。


 それに伴い、マリーゴールドにも緊急招集の書状が届いており、それに応じる運びとなったが、報酬の額に納得がいかないらしく、報酬額を修正して、手紙を両国へと送った。


 ハガンカで二日程、物資と装備を整えた後、豊たちは魔装車で移動を開始する。

街道を進む事しばらく、


「この乗り物、馬車と比べて全然ゆれないね?」

違和感に一番初めに気がついたのはロシィであった。


「おうよ、ユタカの考案で、私が作った【魔鉱製緩衝装置】が活きてるからな、更には無限軌道で不整地も安全安心だし、音も少なく排気もない、冷暖房完備の偉大なる乗り物だぜ」


「因みに、ギャリオンにも操作を憶えてもらうから、そのつもりで頼みますぞ」


「は、はい! 覚悟しておきます!」


 運転は豊で、助手席にはロシィとルル

後部座席には、マリーゴールドとギャリオンという配置である。


 馬車を軽く凌駕するその速度は、各地で魔物ではないかと噂が広がるが、

後に、フォルトゥナ教団の乗り物とわかると、人々は救いの方舟と呼ぶようになる。


 しかし、魔装車は方舟と呼ぶには、余りにも厳つかった。


 途中の村々で、食料支援を行いながら休憩を挟みつつ、普通なら十日掛かる道程を、わずか六日で走り抜いたのだった。



 ギルダム王国と、カザラキア公国は、大きな山脈を境に、国が分かれている。

山脈には切れ目が存在し、そこに両国が砦を隣接する事で、検問を執り行っており

聳える自然の壁の影響で皆、砦を通過する以外に国間移動の方法はない。


 その両国砦では現在、山脈に住まう魔物が活発的に行動していて、度々問題になっている。


 国境沿いなので、どちらの国が責任を持って対処しなければならないのか、魔物の出現位置や、仕留め損ねた際の逃走場所によって変わり、大変手間が掛かっている状況にある。


 国直属の軍隊が、武装のまま国境を越える事は、国同士の決め事上出来ないので、両国共に手を出せずにいた。さっさと決まりを変えれば良いとは誰もが思うが、もし、国同士の争いが起こってしまえば、取り返しのつかない事になってしまう。


 そこで、唯一国に縛られない金の魔術師。マリーゴールド・タッチアップルに、蔓延る魔物共を退治してほしいと依頼が来ていたのである。


 彼女はギルダム、カザラキアの両国に対し、莫大な報奨金を請求。それを早馬にて通達しておき、相手方が条件を正式に了承するまで、砦に到着するのを気持ち遅らせていた。




「フォルトゥナ教団としては、即座に救済処置として、魔物共の対処に乗り出すべきなのではないですか?」


 そうギャリオンは言うが、豊は遠目に、国境沿い砦に集まり始めている傭兵と軍隊を見て、しばらくの様子見を決めた。


 豊が言うにはフォルトゥナ教団が介入し、無償で討伐に乗り出せば、集まった傭兵達は需要を失ってしまう。


 教団の介入が原因で、彼らの仕事を奪うだけでなく、

下手をすれば、賃金を得られず野盗に成り下がってしまう可能性があり、更に、マリーゴールドが本気を出して殲滅を行えば、討伐褒賞を貰い損ねる傭兵も出てくる可能性もある。


 故にフォルトゥナ教団は、有償による食料支援と医療支援に力を尽くし、極力、軍と国が雇った傭兵達に、魔物問題を解決させようとした。


「有償での支援という事は、食事や医療にも需要があるって事ですね」


「そうだ。武力、物資、救護支援。どれにおいても需要があり、既に商人やそれに準じた組織が経済の流れに乗っている。これを我々の介入によって、破壊する事は許されない」


「だからマリーちゃんは、ワザと時間がかかる様に、手紙を出したんだね! おしごと取っちゃわない様に!」


「私にだって、民草を思いやる心くらいはあるさ。それに、なるべく仕事は楽な方がいい」


 ロシィに考えを見透かされ、機嫌がよくないマリーゴールドであったが

彼女も自分なりに、世界の在り方を考えている様だ。



 到着した豊達一行は、マリーゴールドの知名度もあって、両国砦での歓迎を受けた。魔装車も楽に通過できる巨大な門と跳ね橋は、砦の規模と重要性を物語っている。


 砦は門を抜けた先には、広大な敷地が整備されており、そこに商人や治療班、食事係など、それぞれが区画分けされ、配備されていた。


 魔装車の姿を見た者達が、一時的に騒然としたが、フォルトゥナ教団である事を喧伝すると、人々から歓迎を受けた。こうして、両国砦での救済活動は始まったのである。



 マリーゴールドによる、【正式な参戦前の応戦】については、どうしても魔物が強く、傭兵達では対処不可能な場合に限り、ギャリオンの出撃を許可された。

 彼の名声は各所に広まっていて

「魔鉱剣士ギャリオン」「ジェネイラの覇者」「黒鉄の竜巻」「黒鉄の勇者」などと呼ばれていた。振るう剣は必殺。手のつけられない猛獣ですら、まるで木の葉を相手取るかの様に切り倒す強さと恐れられていた。



 ロシィとルルは怪我人の治療により、皆の間では「神の癒し手」「幼き天使」

「フォルトゥナ教の象徴」とも呼ばれていた。


 特に、家族と離れ出稼ぎに来ている者、戦や病や飢えで家族を失った者にとって

彼女の存在は、戦場での大きな支えとなった。

 怒号や叫びが響く戦場で、浅い傷でも手厚く看病し、励ましてくれる。

幼いながらも、そんな健気な姿に誰もが心と体を癒されたのだろう。


 そして豊は、類い稀なる料理の才能を発揮し、皆に料理を提供する事で

「奇跡の料理人」「紅の料理人」「炎の料理人」と呼ばれた。

彼は紛れもなく、女神フォルトゥナが選んだ、この世界の救世主。

それが、今戦場で大鍋を振るっている。


「中華は火力が命‼」

などと、周りの人間には分からない呪文を時折放っていた。


【ピンポンパンポーン】

【称号の取得により火の魔術がアンロックされました】


「あいよぉ! チャーハン一丁あがりッ! いや、このタイミングで? 何故……???」



 前述していた通り、料理によっては高めの金銭を払ってもらい。

怪我の度合い、状態によっては治療費もちゃんと払ってもらった。

値段などで差別化を図らねば、他のサービス業が立ち行かなくなってしまう。

コレは狙い通りにハマり、一か所に売り上げが集中する事を回避できた。



 滞在中に起きた数度の襲撃で、奇妙な点が浮き彫りとなってゆく

山から現れる魔物たちの様子である。やつらは皆、何かに取り憑かれ、正気を失っているようにも、豊には感じられた。


 姿を見れば襲いかかってくる、獰猛な種類ならまだしも

比較的臆病で人前に姿を現さない種類も、魔物の集団に存在していた事に気がついたのは、ここにいる魔術師二人だけであった


一行が砦で活動を始め、二週間が経った。

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