45. 便利な物は使い様
豊達が嵐蛇を仕留めた話は風の如く
即座に国中を駆け巡る事となる
そんな事はつゆ知らず
豊はマリーゴールドと共に魔導力源の開発に勤しんでいた
村長としての仕事は完全に村人に任せられるレベルに達していたので
新規計画以外の事は全て任せるようにしたのである
「実験15回目、魔導力源出力安定、連続稼働試験開始」
「お、出力が安定して上昇していますぞ!イケッ!そのままイケッ!オラッ!がんばれ!がんばれ!」
「急に口調を変えるな、笑わせるつもりか」
そこから安定試験を通過し、嵐蛇の心臓を利用して開発された魔導力源1号が完成した。
強い生命力を持った魔獣や魔物の心臓は、魔素を含んだ液体の中に漬け込む事で生命活動を維持する。
血液を全身に巡らせる代わりに魔力を循環させる事が可能となるのだ。
その魔力の流れによって内部の回転歯車を動かし
動力とするのがこの【魔導力源】である。
「ロビエトから【借りた】設計図を私が修正したものだ、奴らあと一歩まで来てたんだろうが魔術回路の書き方が全くなっちゃいねぇ、アレじゃあ永久に実用化までは行かねえだろうな」
それに加えてマリーゴールドは
豊の話した発想をそのままに
ガンロックの核から魔導式エンジンまで開発と実験を繰り返した
動力伝達装置に魔鉱石を組み込み
伝達率の良い金と銅を使った
「魔導絶縁体とそれに制御装置と冷却術式も必要だな!ユタカ!早く魔術で作れ!レーヌも連れて来い!」
豊よりも開発に夢中になるマリーゴールドの姿は年相応の女の子であった
豊にマリーゴールド、それにレーヌを加えて魔導力源を使った乗り物の開発が始まる
「まず鉄が重い、コレをなんとかしねぇといくら出力を上げようが魔力消費が激しくなって燃費が悪い」
「動かす部分だけ鉄にして貨物車は馬車のように木で作ればいいんじゃないですかね……?」
「レーヌ!オメェにはロマンがねぇのか!金属の塊が超出力でグワァァァァっと走る姿を見たくないのか!?」
「ぬふっ……カッコ良すぎですね……将来は大型二足歩行の鉄人形なんか動かしたいですぞ……」
豊がスラスラとリアル系スタイリッシュロボットを描くとレーヌは感動して声を荒げた
「甲冑の様ですね!かっこいいです!コレがうごくのですか!?」
「そうなったらよいな、と」
豊の書いたスケッチには様々なロボットの構想が描かれている。
「馬鹿野郎、金の魔術師である私がいるんだ出来るに決まってんだろ、まぁ、俺はどちらかと言えば騎乗系統の方が好みだがな」
「じゃあ、こうですな」
豊は腹部からビームを放射出来そうなずんぐりしたロボットを描き出す
一度脱線はしたが3人は結局兵器に見えないデザインに決めた。
歩かせる機構を作るのはまだ出来ないので
不整地を進む事を考慮し、豊が提案した
戦車に使われている【無限軌道】を採用することにした
幾度となく、試行錯誤しながら出来た試作乗り物1号は、軽トラの下が半装軌車になったような乗り物になり。ここだけ20世紀になったかのような錯覚を豊は感じていた
試しに動かしてみると、魔導力源が音を立てて動き出す。
作りはほぼ現代の車と同じようになっているはずなので免許持ちの豊が運転する
動力部から放たれる騒音は改善するとして、スピードは上々であり
半装軌車の特性を活かした納得の出来栄えとなった
因みにコレを一台作るのに嵐蛇で作った金は素材に変換され全て消えた。ロマンを求め過ぎたのだ。
そのまま金として売れば楽だというマリーゴールドに対して、金が大量に市場に乗れば、それ自体の価値が相対的に低下してしまい経済が傾くと豊が彼女を止めた。
その後、夜用にライトの実装と
騒音対策の防音術式、車内の温度を一定化させる術式も組み込まれた
こうして魔導力源式半装軌車1号は生まれた。(長いので魔装車1号とする
燃料は薪、炭、油に残飯など、燃えるものなら何でも可能と言うハイスペック
豊の【溢れる体液】ですらタンクに入れてしまえば霧散する前に魔力へと変換可能だ。
燃えた際の熱を魔導力源が魔力に変換し保存
その魔力を金と銅で作った伝達装置を伝って
ガンロックエンジンへ伝わりその動力が各稼動部へと伝わる。
今後マリーゴールドが納得いくところまで際限無く
カスタマイズを繰り返すだろう。




