38.5番外編 今更プロローグとは
女神フォルトゥナは絶体絶命の危機に瀕していた
『あぁっ!幸福度がまた下がってる!一体どうしたらいいのよぉ!』
彼女が嘆いている理由
それは己が創造した世界の人類幸福度が
5%を下回ったからである
『なんで!?人類にジャガイモの存在を啓示したら食糧問題が解決するんじゃないの!?ジャガイモの連作障害ってなんなのよ〜!!』
フォルトゥナが頭を抱えて悩んでいるところに彼女の秘書であるリアーラ副神が現れた
『フォルトゥナ様、また人類幸福度が低下致しましたね、コレが0になると神様降格と星のリスタートですよ?しっかりしてください』
『だぁってぇ〜!人類の賢さが思ったより上がらないんだもの〜!こんなの無理よぉ〜!』
『まぁ、ポンコツな貴女が作った世界ですから仕方ありませんね、作者以上に頭の良い登場人物は生まれないと言いますし……』
『それは創作の話でしょ〜!どうにかしてリアーラぁ〜!おやつのプリンあげるからぁ〜!』
『ん?今プリンって言いましたね?』
『ひぇっ……!言いました……』
『そう言うと思いまして上級神様に申請書を出してきました』
リアーラが提出したのは
【創造世界救済申請書】と呼ばれるもので
人類幸福度が極端に低下した際に許される
特別な処置の事である
世界の救世主になる器の人材を受肉させて派遣し
直接創造世界に介入させる事が出来る
人選は自由だが
【救世主適性レーダー】で
効率よく救世主を探す事が可能だ
女神は地球の神々と親しい間柄だったので人材選出の許可を得て
優秀な人材を求めて地球に降りた
早速レーダーに反応があった
場所は日本、東京都某所
反応ある人物はなんと
まだ高校生三年生であった
見た目からは想像できないが、適正値メーターの針は限界値を超え、グルグルと周回を続けている。
『なんという救世主適性値……!!見た目は太ったキモオタだけど……きっと未来の大英雄に違いない!』
霊体化で青年の後をつける女神
彼は学校から家に帰るため支度をしていた
『お決まりのパターンとしては……彼が不幸にも命を落とした際になんだかんだ言い包めて転生させれば……!』
カキン!
野球部が練習しているグラウンドから
特大のホームランが放たれ
青年へ一直線に向かっていった
『シャッ!!明らかに直撃コース!』
他人の不幸に歓喜する不謹慎極まりない女神。
しかし、彼女の思惑はあっさりと砕かれる。
飛んで来たボールを鞄で受け止め
手早く野球部員に返す青年
反応速度は光るものがあったのはわかった
『なんという能力の高さ……』
後をつける女神フォルトゥナ
下校途中青年がトラックに轢かれそうな子供を助けるべく車道に飛び出した
『再び転生チャンス!』
彼は爆発的な瞬発力で子供を救出し
受け身をしながら向かいの歩道まで転がっていった
驚く事に2人とも無事に無傷であった
『さ、流石救世主適性を持つ青年……そう簡単に転生させてはくれないわね……』
事後処理を終えた青年は偶然
大荷物を抱えたお婆さんが立ち往生しているのに気付き、荷物を持って立体交差点を渡る
『コレは躓いて階段から落ちる……』
何事もなく立体交差点を渡りきり
お婆さんは青年にお礼を言って去って言った
『…………またまだこれからよ!』
たまたま銀行のATMでお金をおろしていると
マスクを被り、凶器を持った逞しい身体の銀行強盗が現れた
『青年ピーンチ!』
青年は後ろから強盗に近付き
手首を捻り上げて凶器を落とした後
関節技をキメた、強盗は駆け付けた警察に連行され青年は事情聴取に時間をとられる事になる
『なんという救世主……』
川で溺れている女の子
パニックになっている母親
青年は即座に荷物を置いて上着を脱ぎ
川に飛び込んだ
『……どうなる青年……!!』
無事に女の子を救出した青年は
母親に女の子を渡し去っていった
母親は青年の後ろ姿に何度も感謝をしていた
『不死身のスーパーマンかよ……』
住宅街に入ると今度は火事になっている家を発見した
まだ中に取り残された子供が居ると聞き
消防に的確な救急電話をした後
近くの水道で水を被り、濡れた体で火の中へ
『流石にこれはどうにも……』
なった
荒れ狂う炎の中、子供を抱き抱えて青年は帰って来た
ちょうど良く消防車と救急車が到着し
子供は病院へ搬送された
彼は濡れたり焦げたりした身体のまま家に着いた
玄関へ入る前に極力汚れを落とす努力はしたが
それにも限度というものがある
「ただいま〜お腹すいた〜」
「お兄ちゃんお帰り〜うわっ!何して来たの?また人助け?」
出迎えてくれた妹。北条由佳の反応を見る限り
豊の過剰なる人助けは日常的に行われている様である
そんな危なっかしい兄を由佳はいつも心配していた
人格者であった父、北条正巳の背中を見て育った豊は
いつしか父の様な立派な人間になりたいと考え、日夜苦悩し、奮闘している
「今日は4人ほど助けた」
「そんな無茶ばっかりしてたらいつか死んじゃうよお兄ちゃん」
「はっはっは!そう簡単には死なんよ!」
豊は妹にたいして勇ましくサムズアップと笑顔を見せるが
彼女の表情には陰りが見て取れた
「心配してるんだよ……?お兄ちゃん……!ウチに男手はお兄ちゃんしかいないんだからね……!」
「すまなかった……軽率だったよ……」
「反省したんならさっさとお風呂へ行きなさい!制服は手洗いしてから洗濯機にいれてよね!」
「了解いたしましたぞ、マイリトルシスター」
豊の軽口が出たところで由佳の表情も自然と柔らかくなる
「しょうがないなぁ」といった面持ちで妹は食事の支度へと取り掛かり
豊は風呂場へと向かった
「妹よ、背中を流してくれても構わないんですよ?」
この一言で豊はさらに風呂に入るタイミングを逃すことになる
『こんな救世主適性のある人間初めて見たわ……絶対ものにしないと!!』
それから半年、女神はタイミングを見計らいながら転生させるチャンスを待ち続けた
しかし抜群の救世主適性が力を発揮し
この世の悪意が彼を脅かすことはない
これも全て彼の日頃の努力の賜物であるという事は女神フォルトゥナもストーカー中に察した
彼は自身が女性にモテない事を心底気にしていたが
モテないというのは彼の勘違いであった
豊は女性から送られる好意に激しく鈍感だったのだ
面と向かって好き好きアピールをされなければ気が付くことは無く
「わかってよ!私の気持ち!」などという美少女特有の空気は読めなかった。
「ゲームの美少女はみんな振り向いてくれるのに何故……」
彼はゲームの美少女は200人は攻略していたが
人生は美少女ゲームの様に三つの選択肢から選ぶものではない
なんとか弱みを握ろうと霊体化を決めこみ
青年の家内部を刑事顔負けな様子で張り込む女神。
今日も豊の後を追うと
仏間に飾られた遺影には彼の父が写されている。
手を合わせ目を瞑る彼が何を思っているのかは女神には理解出来なかったが
祈りを終えた彼の目には深淵とも思える深い【光】が見えた。
妙な表現ではあるが、この果てのない光が彼を築き、支えているのだと
フォルトゥナは直感で理解した。
彼の部屋は多くの賞状と感謝状に溢れ、所狭しとその経歴を記すものが
飾られていた。しかし、その数が尋常ではなく、壁はすべて埋まり
部屋どころか物置にも置ききれぬ程の名誉が与えられていた。
女神は気付いた。これは病的な善人なのだと。
自分の目の前で困っている人が居れば飛び出さずにはいられない
孤独な英雄の歴史を目の当たりにし、フォルトゥナはこの事を心の片隅に留めた。
彼が己の枷に押しつぶされた時、それを助ける事を想定して……。
そんなこんなで彼が大学生になったある日
今日もピンチは訪れないと思っていた女神だが諦めずにストーカーをしていた
彼が転んで泣いている男の子にポケットティッシュを渡しその場を後にした後
この物語は大きく動き出す
「…………トイレは何処だ……!」
ここまで一気に投稿しましたが
如何だったでしょうか
またまだ書き溜めはありますがとりあえず今回までが一章となります。
まだ編集のやり方がわからないので
地道ににやっていこうと思います




