32.勇者の器
しばらく様子を見るため
ギャリオンの家に滞在する事になった豊達
その3日後
豊は村長の家にやってきた
「ギャリオンを旅に……?」
「はい、同行してもらう事になりまして」
「そ、それでは我が村が……」
「彼がいなくとも村がやっていける様に私が支援を致します」
「あなたは一体……」
「私はユタカ、フォルトゥナ教団創始者であり女神フォルトゥナの使いです」
「あ、貴方が噂の……いやしかし……ギャリオンは我が村の勇者……それにギャリオンには病を抱えた母親が……!」
「私たち教団が彼の母親の病を完治させました」
「なんと!?まさか……いやぁ〜なんという事でしょう!ありがとうございます!ありがとうございます!」
「更にはこの村が自給出来るまでの食料支援に農業改善案、村の治安の改善、教育まで支援させていただきます」
「なんとまた……至れり尽くせりとはまさにこのこと……感謝致します」
「つきましてはまず始めに村の膿を取り除きたいと思います」
村長は急に顔色を変える
「う、膿などと……はて……」
「村長、貴方の息子さんはすべてを話してくれましたよ、ギャリオンの稼いだ銀貨がどうなっているのか、ね」
村長の顔が青くなり汗が噴き出す
「いやぁ……なんのことやら……」
「おかしいとは思ったんですよ、ギャリオンが今まで稼いだ貨幣に対して村の寂れ方は尋常ではないうえ、ギャリオンの母親の薬は買えない額ではなかった、毎度冬を越す為に蓄えはあるはず、なのにギャリオンは馬車馬の様に働いた、何故なのか?」
「そ、それは……農作物が育たなくて止むを得ず村人の食料を買い……」
「村長、この村で算術が出来るのは貴方と息子さんだけだそうですね?村人は今、小麦や葡萄酒の値段がいくらなのか知りませんでした……」
「いや、その……定期的に買えばそこそこの値段が……」
「贅沢さえしなければ銀貨1枚で食料がどれだけ買えるのか、私はこの辺の物価も把握しています、そして最後に……!」
テーブルに置かれたのは粗末な紙束で作られた村の帳簿であった。
それを目の当たりにして村長は震えだす。
「息子さん、キチンとした性格ですね?本当にキチンとしている……ところで村長さん、一本銀貨15枚するお酒は何のために買われたのでしょうか?」
完全に証拠は上がっていた
村長とその息子は
村人が算術を使えない事をいい事に
ギャリオンから受け取った貨幣を
私利私欲のために浪費していたのだ
ギャリオンもうすうす分かってはいたが母の病気の為に追求が出来なかった。
村長はギャリオンをこの村に留める為
母親を生かさず殺さずの状態にしていたのだ
「わわ……どうか……どうか……お許しを……勇者よ……!どうか……!」
ギャリオンは怒りに震えていた
「ギャリオン、君はどうしたい?」
豊がギャリオンに問うと、彼は怒りながらも冷静であった。
「オレ……!村長をぶん殴ってやりたい……長い間母さんを苦しめて……オレを利用して……!でも……!村長は!昔はこんなんじゃなかった……!優しくて思いやりのある人だった……!」
「ギャリオン……」
「最初はオレの少ない稼ぎをやりくりして……頑張ってた……オレが稼いできてから……村長は金を目にして変わっちまった……!オレも、もっと早く言えればよかったんだ……!」
「ギャリオン……すまない……長い事苦しめてすまない……謝っても許してもらえんかもしれんがワシは……ワシは……」
豊がギャリオンの肩に手を掛ける
「……ギャリオン、村長を許してはならない」
「ひぃっ!」
「ユタカさん……オレは……」
「村長にはこれから精一杯償ってもらうんだ……人をまとめ上げる代表、村長としての責任をしっかりとね」
「ユタカさん……」
「それにはまずギャリオンが稼いだ貨幣の清算をする、村長は私利私欲に使ったと言っても全部ではなかった、まだ情状酌量の余地がある」
村長が村の為に貯めていたギャリオンの稼ぎは銀貨にしておよそ3000枚
村への食料の調達、物資の補給で多少使ってはいたが村長と、その息子の横領分は酒によるものであった
「この村が軌道にのるまで支援する事には変わりません、その貨幣はどうするかおまかせします」
村長は全額をギャリオンに返却しようとしたが、ギャリオンは銀貨1000枚を受け取り
残りは村の貯蓄にしてくれと言った
村長の悪さは皆に知れ渡ったが
ギャリオン本人が許した事
皆が彼に頼り切っていた事から
村長には何も言えず
村人達はギャリオンに謝罪していた。
その後、フォルトゥナ教団の支援により村は安定し、皆に笑顔が戻った
ギャリオンは村の為に懸命に働き
皆の信頼を厚く得ていた
それはギャリオンが真に勇者の器である事を証明している様であった。




