表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/254

31.勇者に頼る村



馬車で3日程行った所に村はあった

「あそこがオレの故郷、ソカ村です」


近くに森も山もなく、あるのは細い川だけ


嘗ては森の中にある村であったとされるが

何世代かの時を経て平野となってしまった。


農作物の育ちは悪く

家畜は痩せ、村人は皆生気を失っている。

ギャリオンの話では商人が立ち寄ることも少なく

物資は常に不足している状態であるという。


「先ずは村長に会いに行きましょうか……」


村の中の空気が淀んでいるのが感じられ

商人の通らない村にも関わらず、ちらほらとガラの悪い男が立っている。

村の環境の悪さが伺える。


いまいち言葉に覇気がないギャリオンであったが

豊はなんとなく理由を聞けずにいた。


村長の家を訪れると痩せた村長が姿を現すが

ギャリオンを見るなり目を輝かせてた。


「おぉ、我が村の勇者ギャリオンよ……帰ったか、よくぞ戻ってきた、して、首尾はどうじゃ?」



村長は豊達の事が目に入らないようで

即座にギャリオンへ駆け寄った


「村長、こちらは今回討伐を手助けしてくれた方々で……!」


「おぉ……!失礼した……私が村長です……!ギャリオンがお世話になりましたな……その様子ならさぞかし期待が出来るじゃろう」


「ギルダム銀貨300枚だ、だいぶ苦労をした、死にかけたしな」


ギャリオンが銀貨袋を差し出すと

村長は大喜びでそれを受け取る。


「ありがたいぞ勇者ギャリオン……本当にお前はよく村の為に頑張っている、きっと亡き父上も喜んでいるだろう」



ギリ……



ギャリオンが拳を握ったのは豊には分かった


「ささ、疲れたであろう勇者ギャリオンよ、母上にも元気な顔を見せてあげなさい……きっと喜ぶ事だろう」


「……はい……」


ギャリオンは表面では明るく繕っているが

豊には若干、陰が差して見えた


「すみません、ちゃんと紹介できなくて……村長は……その……あまり人の話を聞いてくれなくて……」


村長の家から出てきた豊達を待ち構えていたのは村人達だった



「ギャリオンの帰還だ!」

「お帰りなさい勇者ギャリオン!」

「我が村の救い手よ!」



皆が歓迎の言葉でギャリオンを迎える

ギャリオンはこの村では

「勇気ある者」と呼ばれていた


剣の才能見込まれ13の時、村長に勇者として

村選抜を受け冒険者ギルドでレベルを申請


初めは村の役に立っていることが嬉しくて

ギャリオンは懸命に働いた


来る日も来る日も戦い続けた

度々村に戻り稼ぎを村長に渡す事で

この村は1人も餓死者を出さず冬を越す事が出来る





「ギャリオン、僕には君が辛そうに見えて仕方がないよ」


「ユタカさん……すいません……オレは勇者で有り続けなければならないんです……皆がオレを頼ってくれる……オレしか戦えないから……」


「ギャリオンちゃん……」


父親を幼いころに病で亡くし、母も同じ病で床に臥せている現状で

頼れる大人が現れぬまま、ギャリオンは大人になってしまった。

身体は逞しい男性そのものだが心が育むのを止めてしまっている。

自分さえ我慢し、戦い続ければ人々は救われる。

この村は彼の身を粉にする自己犠牲のもとになりたっているのだ。



「村を見て回って分かった、皆君に頼り過ぎている、いや甘え過ぎているといった様にも見て取れる」


「皆、農業を頑張ってそれぞれ出来ることをしているとは思っています……」


「しかし、それ以上の成長をしない」


ギャリオンは言葉に詰まってしまう。

人は現状の改善よりも不変を求める生き物だ。

ましてや村の外に出る人も少なく見聞や知識を育む環境にも無い。

現状打破の為に何をしていいのか、【分からない】のだ。



「君の所為ではないが皆、君に頼り切って自らの成長を止めてしまっている。農業も畑の状態から察するに、改善の余地がまだまだある。畑を増やして、農作物を増やす事も出来るはずだ」


「分かってはいます……しかしオレには病気の母がいて……村のみんなで面倒を……見てもらって……オレは……」


「救うよ、君も、君のお母さんも」



ギャリオンは肩を震わせ声を殺しながら泣いた、誰にも話せなかったのだろう、

若い彼が背負うのには重過ぎる責任、豊はギャリオンを救うと約束した。

数年の時を経て、ようやく彼のもとに【頼れる大人】が現れたのだった。



まずはギャリオンの母親の元を訪れた

ギャリオンの母親は息子を見るなり涙を流しながら再会をよろこんだ


彼女の病気は重く、大した医者も呼べない上に症状を抑える薬が高価で

それがギャリオンにとって重い枷になっていた。



豊が症状を見ると呼吸からして肺の病気ではないかと診断した

医者が言うには病名は肺石化と呼ばれるもので

肺が徐々に石化して呼吸が出来なくなるという恐ろしい病だ


完治するには石化直しの薬を定期的に摂取するしかないがその薬は買うには高く

石化の症状を遅らせる程度の頻度でしか飲ませることが出来なかった


「ルルちゃん、おねがい」


ルルのリフレッシュヒールで治療を試みるが全快に至らない

過剰なる粥を与えて体力は以前よりも良くなったが

完治までは届かなかった


「予てからのアレを試してみるか……第4の術!」

豊はルルを肩に乗せて

【時を駆ける創造】を実行した。


毎日の度重なるポーション作成の試みにより熟練度が上昇し

【効果倍加】と【サポート】が

アンロックされていた。


【効果倍加】

作ったアイテムの効果が単純に2倍になるスキル

【サポート】

近くにいる専門職の能力を得てアイテムを作ることが出来るスキル


「クリエイト実行!」

手持ちの石化直しの薬草に効果を伸ばすポーションを混ぜ合わせる


石化直しの上級ポーションがスキルにより二本完成した

早速ギャリオンの母親に飲ませると

身体が光に包まれて大きく湯気が噴き出した

悪いものが全て抜け落ちたかの様に

母親の症状は全快した


正常に働く呼吸器官を確かめ

何度も呼吸を試して自身の身体を見直す

長い間忘れていた正常な呼吸に

ギャリオンの母親は涙を流した



「ギャリオンッ!」

「母さんっ!!」



親子は抱きしめ合いながら喜びを露わにした

「ありがとうございます!ユタカさん……!本当にありがとうございます……!」


ギャリオンと母親は地に手をつけて豊に感謝をした

ギャリオンの憂いはもうない、あとは……


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ