26. 貧民街を救え
豊達が今回訪れたキエーボの街は
運搬業を中心に大きく発展した街であった
街の中には大きな運河があり
そこから船を使って貿易を行っている。
上流にある村から物資を買い付け
時には街で加工業者が材料を購入
加工品を含む物資等を下流の街で売る
というのが主な仕組みである。
この街は商人に溢れ
大きな商人ギルドも存在している
豊は街の代表に面会し
困っていることがないか尋ねた。
代表は特別着飾っている訳ではないが
彼自身も客商売を営んでいる為
質が良く、縫い目も丁寧に作られた衣服を着用している人物であった
かなりの収益をが有るとみて間違いはないだろう。
「ふむ……問題があるとすれば……貧民街の人間ですかね……」
「貧民街ですか……貧富の差が激しいとは感じてはいましたがやはり……」
「我が街は商人達が集う貿易街なので、それなりの税を取り民衆に還元してはいるのですがここの所、魔獣やキナ臭い連中の所為で税金を雇い、兵に割く割合が多くなりまして、そちらの方まで手が回らないのです……税金を払ってくれている民衆には安全を還元しなければ納得して頂けませんし、かといって貧民街の人間を見捨てることも出来ず……彼らは貧しさから盗みを働く事もあり、民衆からはどうにかしろと苦情が相継ぐ始末でして……税金を払えない者達ばかりですから出て行かせろという意見もあり……」
「貧民街の主な人達は親を失った子供達でしょうか?」
「はい、その通りでございます……情けない話ではございますが、是非とも噂に名高いフォルトゥナ教団のお力を貸して頂きたく存じます……。」
「わかりました、私共がなんとか致しましょう、それで、相談なのですが……」
豊は貧民街の徹底改善計画を提案した
豊はフォルトゥナ教団の力で必要な
物資、教育、衛生環境改善を行い
それが完遂したあかつきには
貧民街での彼らの正式な居住権利
安全の保証を約束してもらうという話だった
念を押して書状も残し、この計画を街全面に通達してもらう。
もちろん代表は願ったり叶ったりという事で了承し、多少の街の改修工事も了承した
今回の問題は、貧民街に住まう彼ら自身の怠慢からくるものではなく
物理的、現実的に自力での改善が不可能だったという話である。
からして、こういう自体には外側の人間が
思いっきり支援を力技で押し込み
傾いた均衡を修正するしか手段はない。
豊達は早速行動を開始した
毎度恒例、フォルトゥナ教団の炊き出し。
噂は徐々に広まっていた様で
フォルトゥナ教団が助けに来た。
という知らせは貧民街中の子供達に希望を与えた。
腹を満たすのと同時に体調不良が改善するとされる
聖なる粥の話を聞きつけ
貧民街の外で暮らしていた貧しい人々も
救いを求め豊達の下を訪れた。
粥では回復しきれない人々にはルル特製ポーションを与えた
傷は塞がり骨は元通り
爛れた肌は新しく生まれ変わり
瞳は光を取り戻す
ロシィも豊に付いてまわり、一所懸命に働いた
【時を駆ける創造】で水路を引き
貧しい人々用に風呂も炊ける身体の洗い場を提供し、衛生環境を整える
幸い川が近くにあったのでそれを利用
必要な衣服、道具を与え
元気になった人々全員で一斉に
貧民街地区の大清掃を行う
泥煉瓦や土製の家が多く、それらをセメントから作ったモルタルで補強し
それでも足りない分は建築、増築を施した。
衣食住すべてをフォルトゥナ教団が支援するというとんでもない力技で
貧民街の環境は大きく改善されたのだった。
豊はその場その場で適切な対応と指示を行い
皆の体力気力が戻った後、暫しの休息を挟む
途中で過労により指導者が倒れれば計画は滞る。
それを彼はキチンと理解していたのだろう、気が付けば
カツ丼とからあげ、コーラの消費量は普段よりも増えていた。
環境が改善され、炊き出しで皆に腹一杯食べさせた後は自給用の畑を作らせ
農業を皆に伝える
今まで訪れた村の作物の種を分けてもらっていたのは賢い選択であった。
本来ならば食物の種は門外不出。一粒にすら多大なる価値がある。
それを可能にしたのは豊が積み上げ、救い
実現させた大いなる実りによるものだろう。
ここまでで約1ヶ月
次に着手したのは貧民街の子供達の教育だ
石版式の絵付き文字盤を作るのも慣れたものであったが
更に木を削って札を作り、絵付きのカルタを作った
遊びの中に教育を取り入れる事で
楽しく効率良く学ぶという試みである
子供達の中で物覚えの良い子を選び
教師として教育を施す
空いた時間で代表の元を訪れ
定時報告、代表は現在の変化でも大変驚き豊に感謝をした
代表に教育が進んでいる子供達の雇い先を紹介してもらい直接交渉
字の読み書きと四則計算さえ仕込めば
この世界の職業はなんとかなる
それに粥の効果で子供達の小さかった身体は
本来あるべき成長を見せていた上に
脳の活性化により教育は捗っていた。
腹を空かせ、屋根も無い場所で寒さに震えていたこれまでとは違う
恵まれた環境下での教育は、学ぶ意志を育むには十分な状態と言えよう。
10人中10人、誰もがあの頃に戻りたくない。と強く想い
その一心で懸命に勉学へと打ち込んでいった。
子供達の中には、魔術の才能に長けた人材も存在し
本人の希望で豊が魔術師ギルドに金を払い
才能ある子供達を預けた
そして滞在から3ヶ月が過ぎた
貧民街は完全に別物と化し、優れた人材を
生みだす教育区間へと変わっていた
飢える子供は居なくなり
夜は闇に怯えることなく安心して眠れる
フォルトゥナ教団の功績は街中に知れ渡り
数多くの吟遊詩人達も挙って詩を残した。
街の代表もこの結果に大満足し
予てからの約束を果たしてくれた。
絵付きの文字盤のある場所に教会を建て
誰でも閲覧し、学ぶことが出来る拓けた場を設けたのである。
働ける優秀な人材の多さから
キエーボの街は更に発展した。
豊は皆が救われたことを心より喜んだが
滞在期間中に美少女にモテることはなかった。




