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111. 狩猟神ストルテミス



 リザードマン族との約束を果たし、狩猟神ストルテミスの祭壇へとやってきた豊たち一行は、ストルテミスを呼び出す為の儀式を行う運びとなった。


 女神フォルトゥナ曰く――


『ストルテミスは賑やかなのが大好きな神様だから、祭壇にお供えでもして宴会でもすれば顕現するはずよ』


 との事で、リザードマン達に協力を仰ぎ、宴を催す事となった。祭壇の間に楽器や食事を運び込み、組んだやぐらを囲って盃を交わした。


 リザードマン族に古くから伝わる、多彩な民族楽器の調べに、独特な雰囲気の足運び。その踊りに決まった動きはなく、リザードマン達は律動の赴くままに、それぞれが自前の踊りに興じる。魅力的だとされるメスのリザードマンが、腰蓑の踊り子服で舞い踊る様子に、オスは興奮を隠せないでいる様子だ。


 彼等の美的センスは比較的人類に近いもので、目がパッチリして二重で、鱗に輝きがあり、ふくよかな肉体に、豊満な乳房と張りのある臀部、艶のある肌に細い腰、太めの尻尾などなど、要素が重なる部分は多かった。後、声が可愛かったりするとモテるらしい。


 豊は、彼女達を可愛いとは感じるが、異種族を性的な目線で見る程の上級者ではなかった。


「しかし、あの腰蓑衣装、多少エッチ過ぎませんかね」


「なんだ、ユタカ、あの様な衣装が好きなのか? 私が着たらどうする?」


 ユピスの挑発は、とても直線的且つ情熱的であり、豊は胸の高鳴りと股間の猛りを抑えきれなくなるが、ふと、洞窟での惨劇を思い出し、膨れ上がった性欲は魔力へと変換され、急激に冷静さを取り戻してゆく。


「いやはや、そんなことをされてしまっては、お猿さんどころか狼さん確定ですね。間違いない……ユピスさん、恐ろしい娘……」


「こらっ! ジロジロ見るな! スケベ!」


 祭壇を囲った灯りが燃え盛る中、ロシィとイリスも手を取り合い、大人達に紛れて舞を披露した。


「二人とも本当に可愛い、天使かな? そうは思わぬかねユピス」


「ついさっきまで、私に鼻の下を伸ばしていたとは思えぬ変わり身だな……」


「僕はね、美少女が大好きなんだ。多分みんなが思っている百倍は好きだよ」


「お前という奴は……全く……。まぁ、女の数十人受け止める程の度量がなければ私の夫は勤まるまい……」


「そういうこと、HAHAHAHA!」


 最早、突っ込みすら諦めた豊は、アメリカンホームドラマの様な高らかな笑い声を放ち、それにつられてユピスも笑った。


 その時、祭壇から狩猟神ストルテミスが顕現した。

『おぉ〜! 我が子らよ! 大いに盛り上がっておるではないか! どれ、我にも酒と料理を出してくれ!』


 豊たちは、言われるがままに狩猟神をもてなし、ストルテミスが料理と酒を口に運ぶと、以前口にした供え品よりも気に入ったと、大変喜びを露わにした。


「お目にかかれて大変喜ばしく思います。狩猟神ストルテミス様」


『ほう……この気配は我が女神フォルトゥナ様のものと、それと他にひとつ……よもや貴公、あのお方の使者か?』


「はい、女神フォルトゥナ様から、この世界を救うよう、外界から直接要請を受け、召喚に応じました。ユタカ、と申します」


 積もる話もあるだろうが、まずはこの雰囲気を楽しみたいと、ストルテミスは酒を呷り、しばし歓談を続ける。神々にまつわる世界の作りや、それぞれの役割などについても、深く知ることが出来た。


 ストルテミスの役割は、人々に狩猟の加護を与え、大地の恵みを分け与えながらも、乱獲等による種の根絶を未然に防ぎ、自然界の均衡、主に生物の全体数を保つ事にある。ちなみに、モンスターの数は管轄外。


 人も自然の一部ではあるが、増え過ぎた場合は、命中率的な出生率等をそれとなく調整したりする事で、今まで難無くこなしてきた。


 現在各地で起こっている飢饉や、流行病による人口減少は調整の為のテコ入れという訳ではないと説明した。


 神による命の管理は生まれる前に行うものであり、生まれた後に調整するものではないと、ストルテミスは言う。神の試練にしても、余りにも酷という見解だ。


『ふむ……我々神は、あまり直接現世に手をつけてはならないという決まり事がある故、まさかその様な手段に至るとは……フォルトゥナ様も余程の手詰まりと見える』


「おっしゃる通りです。私達はフォルトゥナ教団を設立し、能力をもってして人類の救済に乗り出しました。しかし、この活動を良く思っていない輩に妨害をされ、大変難儀している状態でございます」


『我が力を借りたいという事でいいのか?』


「何卒、お力添えをお願い致します」


『わかった、貴公らに力添えをするとしよう。我が加護は【必中】矢などの飛び道具を使う際に、強く願えば発動する。日にそう何度も使えぬが、いざという時には有効だろう。余り適当に放るでないぞ。この必中は、因果律に影響を及ぼす。反対に投げて当たる様な、強引な加護の使い方をすると、後で不運が返ってくるでな』


「ありがとうございます。ストルテミス様。十二分に注意致します。」


 ストルテミスはその後も料理と酒を存分に堪能し、

翌朝満足気に天界へと戻っていった。


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