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107. コネクション


 次の日の朝。豊は、昨日出会った商人が経営している店へと足を運んだ。


「これはこれは救世主様、この度は我が店にお越しくださいまして、誠にありがとうございます。何かお望みの品はございますか?」


「今日は商談を持ってきたのですが、お時間よろしいでしょうか?」


「おおぉっ! 紅の救世主自らがこの私めに! 申し遅れました! 私、ここ店長兼、商店街の責任者をしております。フエール・ボルリッチと申します。こんなところでは何ですから、是非、店の中へお入りください」


 フエールに案内され、豊は応接室へを通された。


「改めまして、フォルトゥナ教団長のユタカです。ところでボルリッチさん、というとリパランスで造船所を営んでいるボルリッチ家の方ですか?」


「ご存知でしたか、ボルリッチ家は造船を始めとした技術開発は勿論のこと、商業、林業、建築にも広く展開しておりまして。私は三男坊で商業方面を任されております」


「なるほど、以前に私達は、ボルリッチ家で新しい造船依頼を致しまして、お世話になったのですよ」


「ほほう、ではあの噂の最新船をユタカ様が! いやぁ〜世間というのは狭いものですなぁ〜」


 しばらく雑談を挟み、

お互いの自己紹介が済んだところでフエール氏が話を切り出した。


「して、先程おっしゃっていました商談と言うのは……」


「えぇ、フエールさんの所に雑用奴隷として、例の兄妹がいらっしゃるとお聞きしまして」


「先日はお騒がせいたしまして、申し訳ございませんでした。あの二人が何か?」


「フォルトゥナ様の教え上、目の前で助けを求められた際には、手を差し伸べなくてはならないのです。宜しければ、彼らを譲ってはいただけませんでしょうか?」


「これは驚いた、フォルトゥナ様はヴァマルド奴隷にも救いを与えるのですか? なんとも慈悲深い……あんなので宜しければ、いくらでも差し上げますので、どうぞお持ちください!」


「では、おいくらでしょうか?」


「そんなそんな! ユタカ様から奴隷の料金など頂けませんよ! あんな役に立たない奴隷、丁度処分に困っていたのです! 引き取っていただけるだけで十分でございます」


「いえいえ、私も行商人をしていた時期がありましたから、それはいけません。商売というのは、いつも公平である信頼で成り立つものだ、とかの有名な商人も言っておりました」


「確かに……しかし困りましたなぁ……あんな奴隷でお代を頂くと、私の商売の評判にも関わりますし……」


「ならば提案があります。私は今、この地方における商売人とのコネクションを探している最中でしてね。今後の為にタリアと、救いの村への繋がりが必要なんですよ」


 豊が掲示したのは優先商売権。互いに繋がりを持ち、情報を共有し合う、組合の様な関係である。大体の商人は、商人ギルドの様な大きな団体に所属するが、現状、基本的に商品の流れなどの情報を得るには、結構な金額を払う必要がある。


 互いの地で需要が上がっている商品の情報を交換し合い、優先的に取り引きする事で儲けを出すという簡単な仕組みだ。例えば、タリアで薪の需要が上がれば救いの村から大量に薪を融通し、逆に、救いの村で魚の需要が上がれば、率先してタリアから流通させる。などである。


 そして忘れてはいけないのが、救いの村で生産をしている一番の売れ行き商品【家族計画】の存在。現在は、救いの村にやってきた商人に対し、上限を設け、決まった数だけ取り引きをする形になっており、独占取り引きなどは行なっていない。


 豊は開発者として、生産した避妊具の最大三十パーセントを何処と取引するかを、自由に決める権利を有している。


 救いの村はフォルトゥナ教団のお膝元であり、関係があれば【家族計画】を入荷するチャンスが巡ってくる。直接は言わないが、フエール氏もそれを期待しているはずだった。


「なんと……そこまで……」


「今あの村は、流通の繋がりがまだ強くない状態です。フエールさんとのコネクションがあれば、今後も大きく発展が望めるかと思いまして。もちろんフエールさんが宜しければの話ですが」


 フエール氏が提供するのは、タリアにおける需要の情報と、ボルリッチ家を始めとした多くの商人との繋がり。更に、協力関係を築いた上で、下働きという名目の兄妹ふたりを譲渡すれば、【救世主にヴァマルド奴隷を売った】という不面目を受けずに済む。


 豊が提供するのは、救いの村における需要情報。フォルトゥナ教団の後ろ盾と名声度、【家族計画】の販売権と、兄妹ふたりの所有権。


 どちらかが一方的に得をしているという程でもない些細な提案だが、未来を見据えると、この契約は互いにとってもおいしい話である。村はまだまだ移住希望者が増え、人口も増える見込みがあり、商品の需要も次第に増えていくだろう。


「わかりました。その話、お受けいたしましょう。今後とも良い取り引きをお願いいたします」


「では、こちらの書状にサインをお願いいたします」


 予め用意しておいた契約書を渡し、よく内容を確かめて貰った後、署名をしてもらい、豊も続いて署名をした。それは二枚の契約書で、互いに、相手の名前が書いてある方を所持する事になっている。この世界で基本的な様式だ。


 こうして奴隷の兄妹は、豊の所有物となった。

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