101. 再出発
豊は革命軍と接触した事の顛末をビットマン氏に報告しハガンカを後にした。
「ユタカよ、何故私も連れて行かなかったのだ……」
留守番をくらい、不服といった様子でジト目を向けるユピス。
「ユピスが居ては、まとまる話もまとまらないから……」
「なんだとぉ〜⁉ それじゃあ私がバカみたいではないか!」
「うわあぁ! 運転中にその大きなおっぱいを押し付けないでえぇ!! 前が見えない!!」
ユピスの大きな胸が、物理的に豊の視界を塞いだのに加え、この上ない感触と心地良さが彼を襲う。この後の展開は目に見えていた。
「あっ……! バカ! しっかり運転しろ!!」
「プロテクションかけとこ……」
【ガシャアアアァン‼】
救いの村周辺に作られた石の壁に、豊達の乗っていた魔装車は見事激突した。幸い内部構造は傷付いてはいなかったが、一日、二日は修理に取られるのを豊は確信していた。
「こりゃマリーにどやされるだろうなぁ……」
壁に激突した騒ぎを聞きつけ、たくさんの村人が集まってきた。
魔装車をこのままにはしておけないので、村人の力を借りて魔装車を村の中まで運び出し、その礼として皆に料理を振る舞う。ユピスには壊した壁の修理をさせる事にした。
久しぶりに村に立ち寄り、様子を見て回ると、新しい住宅が増え、人々の数も増えてきたように感じる。
「ユタカ様、お久しぶりでございます!」
「ユタカ様だ!」
「ユタカ様がいらっしゃったぞ!」
豊の姿を見るや否や、続々と人々が集まってきた。
これも彼の人望あっての事だろう。
「やぁ、みんな、騒がせてすまない。丁度立ち寄ったので様子を見にきたんだ。変わりはないかい?」
「ユタカ様のおかげで村は平和そのものですよ」
「皆、ユタカ様に感謝いたしております」
「たくさんの人々が、この村の話を聞き付けて移住を申請しています」
「やはり豊様の人徳と采配の成せる術というべきでしょう」
村人は各々の言葉で豊を絶賛し、豊は一人一人に挨拶を交わしていった。
商業区も、以前来た時よりも多く露店が建ち並び、賑わいを見せている。
信頼と実績を考慮し、選ばれたものだけが、この商業区に店を構えることを許される。誠実に商売に向き合う人こそ、真の商売人であると豊は村を作る際に厳しく規定を設けた。
その甲斐あってか、今ではこの村は商人の質を高く買われ、遠くからわざわざ客が訪れるまでに成長していた。宿も需要に応じた設備が次々用意され、利用する旅人や商人からも大変評判が良い。特に十分整備された水道により、公衆浴場が営業されているのも村が評価されるポイントになっていた。
公園兼広場に向かうと見慣れぬ物体が豊の目に入った。
「此方のお方、偉大なる力と膨大なる知識にて村を救いし、紅の救世主」
豊の銅像である。
「なんでこんな物を……」
しかも、ご丁寧に村を救った当時の、ふくよか豊の銅像であり、今の豊からはかなりかけ離れている。
「懐かしいですねぇ! ごしゅじんさまがぽよぽよだった頃を思い出します!」
ロシィがうっとりと銅像を眺めていると丁度、現村長がその場に現れた。
「素晴らしい出来でしょう。村の鍛冶屋がユタカ様の多大なる功績を讃え、丁寧に作り上げた逸品ですよ」
「出来は申し分ないけどなぁ……」
村からの善意に対して、さすがに技術の無駄遣いとは言えなかった。銅像はこれからも、誰もが利用する公園広場にて豊の功績を讃え、語り継ぐ事となるだろう。
「村長、折角立ち寄ったんだ。村の現状を把握したい。今から役所に向かうが構わないか?」
「えぇ、どうぞ、私もユタカ様にご報告しなければならない事がございまして……」
役所に着き、村長から話を聞き出す。最近村の裏にある山から、見たこともない種類のスライムが大量に発生しているという。
今のところ大きい被害はないが、そのスライムは硬くて強く、本来ならスライムを餌にしているモンスターが逆にやられ、環境とパワーバランスが崩れているという話だった。
「このままではそう遠くない未来、スライムが近辺のモンスターを全て倒してしまう恐れがあります。何卒お知恵をお貸し願います」
「偵察隊や討伐隊は組んだのか?」
「それが、偵察に向かった冒険者達が見事返り討ちにあいまして……」
「そんなに強いのか新種のスライムは……。しょうがないか……僕が直接見に行くとしよう」
「お手を煩わせてしまい申し訳ありませんユタカ様……」
豊とロシィは準備もそこそこに村の裏山へと向かった。




