プロローグ
本作、『やがて天則の救世主』は、完全な自己満足作品ですので期待せずにお読みください(
――走る。
――走る走る走る。
一歩踏み出すたびにがさがさと音を奏でる、足元の草が煩わしい。姿をくらませることができるかもしれない、と、森の中に入ったのは失策だった。
彼女は内心で数刻前の自分、その軽はずみな行動を恨めしくおもいつつも、足を止めることなく走り続ける。
立ち止まってはいけない。
逃げなければならない。
逃げなければ、追いつかれる。追いつかれたら、捕らえられる。
そして捕らえられたら、その時には――『トゥランの人類』たる自分は、きっと、殺されてしまうだろう。あるいは、もっとひどい目に合うかも知れない。
募る恐怖心。彼女には、この理不尽な世界を呪うほどの意思もない。けれど、死ぬのは嫌だった。だから生きることだけを考える。
しかし現実は無情で。それはなんとなく予想はついていて。
今自分を追いかけている人々は、きっと、自分の居場所を事細かく察知する、何らかの力を持っている、と、悟っていた。
だから。
「ようやく追いついたぞ」
「……っ……!」
突如として目の前に、褐色の偉丈夫が立ちはだかった事にも、驚きこそすれ、それはその存在に関してではなく、追いつく速度について。
思ったより早かった。もう少し、引き離せていると思っていたのに。
銀色の髪を刈り込んだ、褐色の男。だらりと下げた両腕それぞれで、白銀の大剣を一振りずつ、構えている。
彼の業の顕現。『パルスの人類』が術法と呼ぶ技によって具現化した、力と『正義』の象徴。
男はその剣をガチャリ、と音を立てて構えると、鋭い目でこちらを睨み、言った。
「大人しく御縄に着くがいい、魔族の娘。もし抵抗するならば――この場で、我が『ウルスラグナ』を以て切り捨てる」
ウルスラグナ。それが剣の名前。少女は新しい情報を脳裏に刻む。
その力は以前見ている。何でも切断してしまう光の刃を伸ばす、二本のグレートソード。使い手の男に、鎧の様に変形して装備される姿も見ている。
戦闘用の式なのだろう。
単純にこの局面から抜け出すのは非常に困難だ。あの剣の光の刀身は何処までも伸びる。
――どうしよう……?
彼女は己の内面に語りかける。
ここで死ぬか。それとも掴まって、いずれ来る死を待つか。あるいは──
──生キルタメニ、全テヲ喰ラウカ。
彼女の本能は叫ぶ。死にたくない、と。生きたい、と。
だから彼女は、今回も選ぶ。
彼女の内から、漆黒の波動があふれ出した。その光景を見た褐色の男は、眉を吊り上げて、剣を構え直す。白銀の刀剣に光が灯る。
「抵抗の意思あり。捕縛は困難と類推……よかろう、この場で切り捨ててやる――我が正義に光をくべよ」
そして、その銀剣から膨大な量の光の奔流があふれだし、指向性を持つと少女めがけて殺到する。
それとほぼ同時に、男のそれとは真逆の色。黒き波動に導かれ、漆黒の光が、少女の内より解き放たれ――