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月光の街9
「満月に恋する僕は不死身なのですか、マスター?」とヒロは尋ねた。
マスターが花束を持ってお見舞いに来た。
花を生け、満身創痍のヒロを見下ろし、優しい口調でマスターが言った。
「ヒロ、君が傷付けば傷付く程に、君は満月との一体化を図っている事を忘れてはならないんだ。分かるね、ヒロ?」
ヒロがマスターに視線を注ぎ尋ねる。
「でもマスター、僕が死んでしまったら、満月とは一体化出来ないのですよね?」
マスターが恭しく頷き答える。
「そうだよ、ヒロ、死なない程度に心身共に傷付く必要があるのだよ。だから死んではならないのさ」
ヒロが泣き笑いの表情を浮かべてから涙ぐみ言った。
「でも僕に襲い掛かる人達は皆僕を殺そうとしているのだし、それを防ぐ事は出来ないのじゃありませんか、マスター?」
痩せて二重瞼の細面のマスターが悲しげに微笑み言った。
「大丈夫さ、ヒロ。君が満月に恋をしている間は、君はどんなに叩かれても死ぬ事は無いのさ」
「満月に恋する僕は不死身なのですか、マスター?」
マスターが頷き答える。
「そうだね、ヒロ。君が満月に恋し続けていれば、君は不死身でいられるのさ、ヒロ」




