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月光の街5
真っ赤な満月が満天の空を飲み込むような夜、ヒロはその満月を背負うように自転車を漕ぎ出した。
真っ赤な満月が満天の空を飲み込むような夜、ヒロはその満月を背負うように自転車を漕ぎ出した。
満月の遮光に押される塩梅でヒロは隣町に向かう。
顔にはそこはかとない微笑みを湛えているが、ヒロの心は満月を殺す罪悪感で一杯であり、暗澹たる心持ちのままに自転車を漕いでいる。
満月から自転車を漕ぐ音が間断なく聞こえ出した頃、ヒロは隣町に足を踏み入れた。
満月を殺す為に用意したカッターナイフを懐から出すと、それを見付け出し欲しがるようにどこからか不逞の輩共が集まって来て、口々に言った。
「てめえ、満月を殺すつもりならば、俺がてめえを殺して満月になってやる。覚悟しやがれ!」
「俺が殺す!」
「俺だ、俺が殺す!」
「待ちやがれ、俺が殺す!」
ヒロとしての満月を殺す順番を争い、仲間割れした輩共が殺し合をしているのを震えながら横目で見遣りつつ、ヒロはクラブムーンライトへの道程を急いだ。




