月光の街36
ヒロは玩具の街に辿り着いた。
ヒロが目覚め、一週間の入院の後母親の制止を振り切って退院し、満月の夜自転車を漕ぎ出しマスターがいるバーに赴いた。
だがバーには誰もいない。
店が開いているのに人が誰もいない事を訝りヒロはカウンターの中に入り、裏に通じる通用口を見付け押し開けた。
裏には表側からは何故か見えない広大な庭園が広がっていて、天空には巨大な満月が浮かんでいる。
その満月の遮光に照らされたヒロの眼に遠く煙るようにガスタンクが見えた。
ヒロは自分の影を踏むようにそのガスタンクに向かって歩き出した。
この庭園はマスターの世界であり玩具の街なのだと思うと、ヒロは心躍る思いで、満月に誘われるように歩いて行く。
木々が生い茂る庭園の隘路を歩いて行く途中丘に登り、そこに意味もなく一本のポールが立っているのを見付け、それが何故立っているのか、その用途をヒロは考えたのだが、分からなかった。
丘を下り喜々として躍るように影と一緒に歩いて行き、郵便ポストが独りぼっちで佇んでいるのを見付け、ヒロはそれを励ますように一度叩き、ガスタンクにたどり着き、階段をまるで満月に向かうように昇り始めた。
そしてガスタンクのほぼ真ん中付近まで昇り詰め、ヒロはそこで眼を見開き満月に右手の人差し指をかざし、その指を鋭利な刃物にしてガスタンクに丸い穴を開けて、ガスタンクの中に浮かぶ光り輝く輪を見付け、そのまま指先に火を点し、ガスタンクを爆発させた。
すると世界が真っ白となり、ヒロは光輝く輪となって丘の上まで投げ出され、無意味に立っているポールにはまった。
輪投げだ。
そしてヒロは大いなる満月の愛と一体化した。
思えばこの物語は遥か三十年以上前に初めて描いた詩なのですが、これは愚かで救いようもなく、どうしようもないろくでなし(笑)の私の人生の、救いを求め夢想する物語と言って良いでしょう。私の原形は正に脆弱なこの物語の主人公そのものであり(笑)それ故に何とか意気地を以って生きる為の言わば指標がこの物語の心髄だと思います。拙著通読有り難うございましたm(__)m




