月光の街3
「満月の女性と一体化するには、それしか道は無いのだよ、母さん、御免ね」とヒロは言った。
病室。
満月の赤い色が滲むように、ヒロは充血した眼を見開いた。
母親が心配げにヒロを覗き込み言葉をかける。
「ヒロ、もう満月に似た女の人を追い掛けるのは止しなさい。こんな命からがらの思いをしてまで追い掛ける価値なんか無いわよ、ヒロ」
全身包帯だらけで、ぐったりとして横たわっているヒロがくぐもった声で答える。
「母さん、好きなものは仕方ないのだよ。この恋心を成就するまでは僕はひたすら満月のような女性に恋をして、それを追い掛けるしか道はないのさ。母さん…」
母親が涙ぐみ告げる。
「ヒロ、世の中には満月に似た美しい心を持った女性などいやしないのさ。女は血みどろの魔物でしかないのよ。その血潮を満月の赤い色が染めたって、それは泡沫の生の息吹を欠いた玩具の街の悪戯にしか過ぎない恋なのだから、その辺りを理解しないとね、ヒロ、母さんはヒロの事が心配で心配で夜も眠れないの。ヒロ、分かって、お願いだから?」
ヒロが充血した眼に涙を溜めて言った。
「母さん、心配かけて本当に御免ね。僕は満月の心の持ち主だから、満月に恋をして殴られても痛くなんかないのさ。これから先も沢山殴られるだろうけれど、僕は満月の女性を手に入れるまではこの足で自転車を漕ぎ、満月の下隣町に行くのを止めはしないよ。母さん、御免ね」
母親がすすり泣きした後言った。
「ヒロ、あんた、ムーンライトの満月さんを本当に殺すつもりなのかい?」
ヒロが力なく頷き答える。
「満月の女性と一体化するには、それしか道は無いのだよ、母さん、御免ね…」




