月光の街20
「崇高なる殺人ゲームのポリシーをエセ満月の愛とやらに売り渡した大罪は万死に価するわ」とキャサリンが言った。
ヒロは暴行を受けず、そのまま拉致られ、キャサリンのマンションに連れ込まれた。
そしてまるで異端者尋問のように、拘束衣を着せられ手足の自由を奪われたヒロにキャサリンが尋問をする。
「君はただ満月に恋をしているだけなのに、私をその満月の代用品にしてエセなる愛を告白する大罪を冒した。それにも増して許せないのは、君が私達の殺人ゲームを、在りもしない玩具の街とやらに売り渡し、裏切り、殺人ゲームの真髄たる魂を売った事が許せないの。崇高なる殺人ゲームのポリシーをエセ満月の愛とやらに売り渡した大罪は万死に価するわ」
拘束衣を纏いソファーに座らされているヒロが眼を見開き恐怖に怯えながら尋ねる。
「殴る蹴るならば、別にしても構いませんが、キャサリンさんは一体僕に何をするつもりなのですか?」
酷薄な笑みを浮かべてキャサリンが答える。
「この部屋は暗幕を張れば、いつもプラネタリウムじゃないけれども月夜状態なの。そしてそのスクリーンには、君が好きな動かない満月の静止画像だけが大映しされるようにセットしてあるわけ。そしてあなたは眠らずにじっとその満月だけを見続けて欲しいのよ。つまりあなたは食事と水は与えられるけれども、時間の経過と身体の自由、眠りを奪われるわけ。でも眠らずに発狂するまで見続ければ、君自体が精神異常者だから、逆に正常になってしまうかもしれないわね。それを私と満月で見届けて上げるのが、私達二人の君に対する賭けを介した崇高なる殺人ゲームとしての復讐なのよ」
唇を震わせヒロが尋ねる。
「僕の助かる道は無いのですか?」
毒婦そのもののキャサリンが黒く微笑み答える。
「君が眠ろうとしたら、その拘束衣が君の体を針が刺すように締め付け、君は君の恋する満月を墓標として、狂い死ぬしかないのよ。但し一つだけ、君が正常になってしまったら、その懺悔の魂に免じて解放して上げるから、そのつもりでいて頂戴」
ヒロが涙ぐみ尋ねる。
「僕の正常なる証とは何なのですか?」
キャサリンが無機質な眼差しをしてヒロを見下ろし言い放つ。
「それは君が自分で考えてみてよ。時間は無いのだから、逆に膨大にあるじゃない。お馬鹿さん」




