10/36
月光の街10
下弦の月に映し出された花束の光沢は、まるで静寂なる死の歌声をその音なき琴線で醸し出し、ヒロの辛い悲しみの吐息を、何処か愛でるように夜のしじまを作り出している。
病室の窓を通して下弦の月が見える。
静寂に包まれた病室の中は暗く、その分月明かりに眼が行く。
マスターが活けた花束がその月明かりに映し出されて、息を呑む程に美しい。
背もたれを上げたままヒロは一つ吐息をついた。
下弦の月に映し出された花束の光沢は、まるで静寂なる死の歌声をその音なき琴線で醸し出し、ヒロの辛い悲しみの吐息を、何処か愛でるように夜のしじまを作り出している。
ヒロは一人ぼっちで考える。
きっと満月ではなく、この下弦の月のような女性を好きになれば、自分の人生も違うものになっていたに違いないと。
華やかな満月は玩具の街への試金石となる分、命懸けであり、それは塗炭の苦しみと言ってよいものだ。
もがき苦しみに慣れる事は有り得ないとヒロは考える。
玩具の街で満月の女性は待ち受けているのだろうかと考え、包帯を巻いたヒロはもう一度悲しい吐息をついた。




