表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/9

【サブストーリー】母達のトラウマ話~私は地獄の景色を見た。

「ゼディリアお姉様が、フトロポワン王国に行くと聞いたわ。……大丈夫なの?」


私の親友、インルビン皇女の葬儀が終わった後、起こった一つの出来事。彼女は今でも、それを引きずっているのではないかと思う。



「正直に言うと、怖いよ。アンタでも治せない傷を負った記憶があるからね。」


あれは…姉、フェンネガリーヌの崩御が告げられた直後のことだったとあたし達は記憶している。



【魅惑草の記憶】


妹に、インルビンが託した双子。赤子らしからぬ冷酷な瞳を持った者がスティニス。その妹で、よく笑うのが可愛らしい者がフォーリア。


コルフィーヌに育てて欲しい、って頼まれていたんだけどさ……人生って思い通りにはならないモンだよね。

生まれた双子には王位継承権があった。これが厄介なものでねえ。


『両方、一緒に育てる』なんて無理だった。インルビンのドS養母が来て、男の方の赤子を引き取っていったのさ。


……諦め切れないあたしは、死人畑が広がる魔物の巣窟へ飛び込んだ。

腐った肉の臭いが立ち込める中で、冷酷な瞳があたしを見下ろしていた。



テタルゥラと正面からやりあって、良いところで捕まっちまった。

捕まっちまったあたしは、水責めやら苦悩の梨やら、拷問を受けて……。


チマチマとした攻められ方でヘトヘトになった頃、


「皇子に剣術を教えたいんだけどね。」

と、あたしが言うと


「あら、有難いわね。……生きて帰れたら認めてあげるわ。」


そんな風に言われて……。



で、命からがら国に帰ってみれば妹でも浄化出来ない毒を盛られて、危うく失血死するところだったわけよ。



あ~恐ろしい!


あの時、剣はまともに握れなくなるわ、酒は飲めなくなるわで、大変だったし……。今では何とか剣の腕が上がったけれど、利き手はもう、使い物にならなくなったし。

……トラウマ、ってやつになっちまったらしい。……姉の王命と同じくらいにね。



【緑白花の記憶】


私はあの時、スティニスとフォーリアを別れさせるべきだと思ったわ。

そうしなければ、フォーリアは母親と同じ呪いによって死を迎えることになると解っていたから。


私達、ミンナスの娘はフェンネガリーヌお姉様が呪いの全てを請け負って国を魔物から守り、何とか生き延びていたわ。お姉様は、自分の魂のカケラをゼディリアお姉様に預け、何枚もの絵にして各地に売り払うように命じた。



……それがゼディリアお姉様のトラウ

マ1。



トラウマ2は互角の相手にボコボコにされたこと。……あれは私のトラウマでもあるのよ。


私は物心ついたときから人の死相や、生まれる時間が見えるの。周りの世界が見えない代わりに。……今では見えるけれど、それは花園の中だけの話しよ。


……スティニスはフトロポワン皇国に行くべきだって、お姉様に言えなかったときのこと…思い出すと悲しくなるわ。



あの時『お姉様を止められたら良かったのに』って思うから。



過去に捕らわれたら終わりだと言うけれど……お姉様が苦しむ姿なんて見たくなかったの。


無惨な殺され方を見て、聞いて、毎日心が折れそうになる日々。

生まれてくる命もあったけれど、消えていく命の方が多いのが現状で、私の悲しみは絶えない。




…『お姉様を喪いたくない』って思っていたら、瀕死のお姉様が帰って来て…どうしたら良いのか解らなくなった私を支えてくれたのが、シャルルお兄様。


けれど、お姉様は少し強情な所があるから、そのまま国境に行ってしまって……。

『二度と帰って来ないんじゃないか』って泣いたの。


だから、今でも国境に行くお兄様達を見送るのが怖くて。


……これが私のトラウマ。









「……無理せず、いつでも帰って来てね。ゼディリアお姉様。」


「ああ、そうだね。でも、無理しないとやれない仕事さ。……生きて帰ってくるから、待っていてくれるかい?」


「…魂だけになっても、待つわ。私が恋人を待ち続けたように。」



平和がどうか訪れますように。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ