吟遊詩人の旋律
「コルフィーヌ、伝説について語ってくれぬか?」
緑白花の姫。生と死の狭間で微睡む者。彼女なら、語ってくれるはず。
「フォーリアを泣かせてまで求めるモノのことね。…貴方に理解できるのかしら?」
■星巡りの伝説
千年に一度、星は巡り、我はそなたの願いを叶えよう。願いを叶えたくば、我の契約に応えよ。
かの地を巡り、|歌(星屑)を集めよ。
星屑を唇に宿せ。
花は歌い、清らかなる『月の雫』が目覚めた時、
星降る丘の上、そなたの願いは叶えられよう。
その手で茨を焼き払い、籠に入る鳥となれ。
光に口付けるとき、そなたは救われよう。
茨を焼き払わず、籠に入る鳥にならず、闇に口付けるならば命短し。
「スティニス、理解できたのかしら?」
「そなた、とは誰のことかわからぬ。」
コルフィーヌは更に語る。
■契約
『星巡りの伝説』は海神族のために交わされた古き契約のことを言うわ。
その昔、私の母は妹と、神の王に戦争を止めると誓った。そのとき、人間との婚姻を認める代わりに、生気を吸い取られていく呪いをかけられた母は契約を交わした。どんな病気も癒える千年に一度の願いを。
『祖父と孫が交わした古い契約』
……これを、星巡りの伝説と言うの。
「貴方、この詩の意味を言ってみて。」
旅に出て各地を巡り、光る星屑を集める。神に仕えし姫たちが、舞を踊るとき、月氷花の姫は目覚め、願いを叶える。
「これ以上は、わからぬ。」
全ての意味を理解出来なくても仕方ないわ、と彼女は言う。
「これが理解できるのは、契約を交わしたミンナスと、モヴィラード、私だけね。」
■司教、少しだけなら意味を話す。
千年に一度、満月の夜。ミンナスは花と共に目覚める。各地を巡り、星の都にある丘で星屑に願う。
ミンナスより、花を貰い、清らかな水を飲む。
希望を守るならば、寿命は長く、
血に汚れるならば、寿命は短い。
「……私は重要な所を、話していないわ。その部分は貴方が旅の中で見つけるのよ。」
『娘を泣かせても、旅に出る』
それ程の決断をした貴方に。全ての答えを教えることはないもの。