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気になる気持ちは止められない!  作者: 空橋 駆
4章 世間は狭いよ本当に side:小織
12/21

11話 新たな関係出来上がり

今日も今日とて、授業が終わる。


「それじゃ、今日は部活だから……」

「うん、また明日ね~」


残念ながら、今日はわたし一人で帰らないといけない。

そう思っていたら……


「待ってたよ、小織ちゃん」

「あ、あさおねーさん……」


帰宅しようと思っていたところを、

唐突に現れたあさおねーさんに呼び止められた。


「色々と話したい事があったから、

 先回りして大急ぎで待ってたよ」

「あ、ありがとうございます……」


確かにそれは嬉しいけど……

今日再会して、その日のうちにこの行動。

わたしの記憶の中にある、以前の先輩と比べると……

行動力が間違いなく高くなっている気がする。


「そ、れ、とっ……」

「な、何ですか?」

「今日は会わせたい人がいるから、

 忙しくなければ、是非とも一緒に来て欲しいな~」


きっと、そこで会うのは彼氏さんだと思う。

多分緊張してしまうから……逃げたくなってきた。


「温かくて美味しいココア、今度奢ってあげるから」

「え……」

「好物だよね」

「はい、覚えていてくれたんですね」


先日の喫茶店でも頼んでいたけど、わたしはココアが愛飲しています。

特に、温かいココアは最高なのですが……


「でも、物で釣られる気はありませんよ?」

「そういうと思ってた。

 だから、私は強制はしないって言ったはず。

 決めるのは小織ちゃんだからね」

「え……あ、はい」


その時のあさおねーさんの表情は、

今まで決して見たことが無かった、真剣な物だった。


「もし付いていくとして……

 あさおねーさんの彼氏さんに会いに行くのですか?」

「それもあるけど、それだけじゃないよ。

 他にももう一人いるけど、気にしなくて大丈夫。

「そう……ですか……」


正直、そんな所に足を踏み出すのは怖い。

そう思っていると、あさおねーさんに頭を優しく撫でられた。


「心配しなくても大丈夫。

 昼の時に話した、小織ちゃんの事を教えてくれた人だよ」

「それって、藤山くんですよね」

「あ、そうだったね。顔見知りだったのをすっかり忘れてた……」


何となく、冗談に……聞こえないのが困るよね。


「お待たせ~

 小織ちゃん、連れてきたよ」

「え、えっと……」


わたしの前には、二人の男の人。

片方は藤山くんだから、もう片方は多分あさおねーさんの彼氏さん。


「緊張しなくて良い。

 俺は、藤山晴樹。君の名前は?」

「榎木小織……です」


緊張して上手く声が出ない。

変に思われていなければいいけど……


「朝葉の中学時代の後輩と聞いていたが……

 なかなか可愛らしい娘じゃないか」

「え、あっ……ありがとうございます」

「中学時代より可愛らしくなったと思うよ、私も。

 あさおねーさんは、綺麗になったと思います」

「えへへ……ありがとう、小織ちゃん」


晴樹さんは、何かとても優しそうな人だった。

二人並んでいる姿を見ると、本当にお似合いです。


「羨ましいなぁ……」

「ん、何か言った?」

「え、いえ、何も……」


思わず呟いてしまったのを、あさおねーさんに聞かれていた。

わたしは、何も答えられなかった。


「弟とも面識があると聞いた。

 あいつに女友達なんて少ないだろうから、仲良くしてくれると助かる」

「余計なお世話ですよ、兄さん」


今まで一言も発してこなかった藤山くんが発言したのを聞いて、

わたしは思わず、そちらに顔を向けてしまった。


「わたしは、別に構いません。

 藤山くんとお話しするの、楽しいです」

「なっ……」


思わず本音が漏れて……

藤山くんが硬直していた。


「ふーん、なるほどなるほど」

「ほう……珍しい反応をする」


それを見て首を振り合ってる先輩さん二人。


「小織ちゃん、一つ提案なんだけど……

 弟くんの事、名前で呼んであげた方がいいかも」

「えっ……

 そ、そんなっ……」


まだそこまで仲良くなっていないと言おうと思ったら……


「勘違いしては困るから言うのだが、一応俺も智樹も同じ藤山なんだ。

 一応、兄弟だからな……」


そっと藤山さんがわたしに注意してくれた。


「”さん”と”くん”の呼び方の違いで判断するの、大変だと思わない?」

「そういう事ですか」


確かに、苗字だけしか言わなかったらどちらを指すのか判らない。

ちょっと緊張するけど、仕方ないよね。


「弟くんも、それでいいよね」

「断ったら斜め上の呼び方を提案されそうだから、

 自分はそれで構いませんよ」


その、あさおねーさんが提案する斜め上の呼び方が気になったけど、

名前で呼ぶことを許してもらえたのは、嬉しかった。


(釉は苗字を呼び捨てだもんね……)


少しだけ、仲を深められそうな気がした。


「ということで、改めて……

 智樹さんと呼ばせていただいて、良いですか?」

「別に構わないよ、榎木さん」


千佳さんという人みたいに、名前では呼んでくれなかった。

ちょっとだけ、寂しく思った。


「お兄さんの方は……」

「智樹と判別が付くなら、好きな呼び方で構わないよ」

「それなら、藤山さんとそのまま呼ばせてください」

「ああ」


あまり喋らない人なのか、静かに頷いていた。


「滅多に女の子と喋らないから緊張してるでしょ……」

「う、うむ……

 やっぱり見抜かれていたか」

「兄さんらしいな……」

「智樹も人の事をあまり言えないだろう」

「小織ちゃんはどう思う?」


三人の会話を聞いていて、その雰囲気が良いなぁって思っていたら……

あさおねーさんがいきなりわたしに話を振ってきた。


「わ、わたしはまだあまり智樹さんのこと知りません」


これから色々と知ってみたいと思います。

知ったら、もっと好きになれそうな気がします。


「それにあさおねーさんと藤山さんの事も、

 友人に聞かされて知ったんですよ?」

「聞いた相手は沖本だろうね。

 千佳さん繋がりだから色々聞いていても不思議とは思わないよ」

「あら、そこに繋がってるんだ」

「ほう……」


その、千佳さんという洋菓子屋の店員さん。

とっても重要な人ではないかとは思ったけどよく知らない。


「なら、二人が出会ったのって……

 もしかして、千佳さんの勤めてる洋菓子屋?」

「最初に会話した場所……と取るなら、そこになる」


でも、本当は……

それまでに何度も、すれ違っているような気がする。


「なんか、そう考えると運命的だと思うよね……

 ところで、弟くんって彼女いたっけ?」

「いませんよ……って何をいきなり聞いてますか、義姉さん」


うろたえる智樹さん。


(彼女、いないんだ……)


わたしにもまだチャンスはあると思うと同時に……


「義姉さん?」

「あ、しまった」


気まずそうな顔をする智樹さん。

目を閉じて何も聞かなかった事にしようとしてる藤山さん。


「あさおねーさん、これはどういう事ですか?」

「小織ちゃんになら説明してもいいかな。

 本当はあまり教えない方が良いんだけど……」

「朝葉の好きにしたらいい。

 実際は誰も言わないから広まっていないだけで、皆感付いていそうだからな」


つまりわたしは、その辺の噂にとても疎いってわけです。

仕方ないよね、情報収集は釉が得意だから任せちゃってるし。


「実はね、晴樹さんと婚約済みなの」

「で、自分からすれば、未来の義理の姉さんになる」

「そうだったんですか」


不思議と納得できたのは、この場の雰囲気が和やかだったからかもしれない。

だって、先程から先輩二人がべったりとくっ付いて……


「あまり驚いてないよね……」

「そのラブラブな姿を見たら、誰も疑わないと思います」

「榎木さんもそう思ってくれるのか……

 有難いね、味方が一人増えてくれた」

「それは喜んでいいのか微妙かも」


智樹さんと仲良くなるには嬉しい方向性なのに、

素直に喜んだら色々巻き込まれそうな気がして……

思わず、本音が出てしまった。


「さて、そろそろ時間かな。お開きにしよう。

 話し足りなければ、また改めて時間を作れば良い」

「うん、もうこんな時間だよ……

 ということで小織ちゃん、これからもよろしくね」

「はい、皆さん……

 これからも、よろしくお願いします」


わたしは、皆の前で一礼した。


「帰り、途中までは一緒だけど……」

「そろそろ友人が来る頃なので、その人と一緒に帰ります」

「うん、それなら、またね」


あさおねーさん達と別れて、わたしは校門で待つ事にした。


暫くして、釉がやってくる。


「あれ、こんな時間まで残ってたの?」

「うん、色々あって……」

「もしかして、三野先輩と話してたのかな?」

「ううっ、鋭いよ……」

「あれだけ気に入られているのを見たら、

 それ以外に思いつけないかな、普通は」


しっかりと見通されていて、相手の感想まで聞かれましたとさ。

だけど、あさおねーさん達と話した内容は……

最後まで、何一つ聞かれる事無く帰宅していたのだった。


多分、気を遣ってくれたのかもしれないけど……

全く何も聞かれないと、それはそれで寂しかったのは秘密。

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