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気になる気持ちは止められない!  作者: 空橋 駆
3章 休憩時間は千客万来 side:智明
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9話 伝達ルートは非公開

さて、今現在の自分の状況を正確に答えてみよう。


(どうして、こんな所に?)


昼食の時間に兄夫婦に呼び出されて、

人気の無い教室に連れ込まれているのだが……

もう一度言おう、どうしてこんな場所に連れて来られた?


「義姉さん、一体何でこんな場所に?」

「とりあえず、俺もここに連れてきた理由を……」


兄さんにも事情が説明されていないらしく、うろたえていた。


「多分、一緒に聞いてもらった方が良いかなと思ったから」

「ふむ、何かあったのだな」


義姉さんの一言で、あっさりと兄さんは引き下がった。


(ここはもう少し時間を稼いでくれても……)


そう思ったが、自分にとっても呼び出される原因が不明なので、

とりあえず話を聞いてみなければならない。


「えっと、正直に答えて欲しいのだけど……

 昨日、女の子と一緒に並んで帰ってたのは間違いない?」

「何だって?」


義姉さんの言葉に、自分が反応するよりも速く兄さんの方が反応していた。

無論、自分にも心当たりがある、いや……


「あ、あはは……

 まさか義姉さんに見られていたとは思わなかった」

「校門の所で仲良く話していたから、

 話しかけるの止めたんだけど、大正解だったみたいだね」

「そんな事があったのか。初耳だな……」


兄さんはただ驚いているだけだった。

自分があまり女子と話をしていないのを知っているはずなので、

そういう意味では、驚かれるのも無理は無いのかもしれないが……


「どんな娘なの、教えて~」

「こら、単刀直入に聞くんじゃない……」


だから、言う前に義姉さんを止めてあげてくれませんか。

結局こうなると答える事しかできなくなるのだから。


「まあ、俺としてもそれなりに興味があるので、

 教えてくれるのならば、是非とも」

「いや、兄さんまで揃って笑顔で乗ってこないで欲しかったな……」

「駄目なのか?」

「駄目とは言ってないけど……」


何というか、義姉さんの誕生日より前の頃と比べると、

かなり印象が変わってしまったかのように見える。


(義姉さんのお陰……なのかな、これは)


まあ、あんな無表情な状態と比べると、

今の兄さんの方が間違いなく面白いし格好いいだろう。

それが原因で色々と嫉妬とかの対象にでもなりそうかと思ったけど、

意外と上手く立ち回っているらしくそういう噂は聞かない。


逆に、こちらの方がそのときの事を色々聞かれて危なかった。

どうすればああなれるのかとか、経緯とか……

正直、面倒臭かった。


話が脱線したが、大体状況としては似ている。

ただ、相手が身内だから若干厄介なのは間違いない。

下手な事は言えないが、それでも簡単に教えては……


「弟くん、白状した方が身の為だよ?」

「だから何でそんなに脅迫口調……

 義姉さん、幾らなんでも悪乗りが過ぎ……」


そう言おうとした自分に向かい、

思わぬ方向から反論が飛んでくる。


「本人から聞けなければ、あの人を使うのだろう?

 その方がもっと大変な事に……」

「あ、ああ……」


間違いない、ここで言わないのを頑なに貫き通したら……

巡り巡って最後は千佳さん経由で伝わりかねない。

何せ二人は主従関係に近いから遠慮なく告げてしまうだろう。

そして千佳さんも喜んで協力してしまう。


そうなると千佳さんからもからかわれる事になる。

兄夫婦にお節介なら協力するのは楽しいのだが……


(こっちの件に介入されるのは、厄介だ……)


考えるだけでも、恐ろしい。

それでも、簡単に口を割るのは面白くない。


「彼女には、普通に話しかけられただけで……」

「それなら一緒に帰るなんて事はしないよね~」

「いや、それは、だから……」


上手い事返され、見事に追い詰められていく。

流石、あの誕生日を潜り抜けた義姉さん……

侮っていたわけではないけど、これは不利だ。


「名前だけでいいですか?

 それとも、出会った経緯とか……」

「名前だけで良いよ。

 心当たりのある人物かもしれないし」


それなら尚更困った事になりかねない……

そう思いながら、白状する事にした。


「確か、榎木さんといったはず……」

「榎木さん……ね。同じ学年の娘?」

「同学年でクラスが違うだけですよ」

「う~ん……」


それを聞くと、義姉さんが何か考え込み始めた。


「どうした?」


心配そうに、兄が駆け寄っていく。


「大丈夫。だけどもう少し情報が欲しいなぁ……

 たとえば、下の名前とか」

「下の名前……」


あまり話の中では出てこなかったので、

自分はあまりよく覚えていない……


「もしかして、知らない?」

「いえ、聞いた事はあるはずですが印象に残ってません」


よし、これならその先を追求される事も……


「思い当たる人物でも居るのか?」

「うん、だけど確証が持てない」


残念そうな顔をする義姉さん。

実は自分も、はっきりと覚えていない。


「とりあえず、その名前を教えてみたらどうだ」

「そうする」

「なっ……」


兄さんの助け舟によって、追求が再開されるのだった。

何だろう、この夫婦のコンビネーション……

あまりにも絶妙すぎて、脅威すら感じられる。


「えっとね、私が知っている娘なんだけど、

 榎木小織って名前の……」

「それです。彼女の友人がそう呼んでました」

「友人……沖本さんだね」

「ああ、そう名乗ってた」


というか、その二人を知っているのに驚いた。


「ふむ、無事に思い出せて良かったな」

「うんっ」


ハイタッチをしている兄と義姉さん。

千佳さんがここからお節介を焼く必要が無いほどに仲が良いと思った。


「実はね、小織ちゃんなんだけど……

 中学時代に私と同じ部活にいて、とても仲が良かった娘なの。

 で、その友人の沖本さんの事も色々と」

「ああ、それなら良く知っていても当然ですね……」


先日の試作プリンの件含め、世間は本当に狭いものだと思った。


「ということで、実際に会って話をしてくるよ~」

「待て、今から行くつもりか?」


咄嗟に兄さんが義姉さんを止める。


「せめて帰りに呼び止めるくらいにしておけ。

 間違いなく長話になるだろうからその方が間違いが少ない」

「あはは……」


兄さんの読みは多分間違っていないのではなかろうか。

特に久しぶりに会ったとなれば会話が弾むのは言うまでも無かろう。


「自分はここで失礼……」

「待て」

「え?」


これでお役御免ということで、そそくさと逃げようと……

そう思ったのに、兄さんに退路を断たれてしまった。


「お前も来るべきだな、その時は。

 案内人として、護衛として一番の適役だろう?」

「逃げちゃ駄目だよ、弟くん」


兄さん、勘弁してくれませんか、それ。

この後に来る言葉に、妙な寒気を感じる。


「どうやってその二人と知り合ったのか聞いてないから、

 それも含めてちゃんと教えてね」


義姉さんの言葉は、まさに自分の予想していた通りだった。


(結局、問い詰められる事になるのか。

 それどころか、下手すると……)


ああ、考えるだけでも面倒だ。

しかし、自分の蒔いた種になると思うので何も言えない。


「それじゃ、私達は戻るね」

「だな」


呆然とする自分を置いて、兄夫婦はそのまま自分の教室へと戻っていった。


(ああ、もう、なるように……なってしまえ)


諦めにも近い気分になった所で復活し、少し遅れて教室へと戻ったのだった。

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